エファンタジー/第五話「タイトルが思い付きませんでした」

Last-modified: 2023-03-03 (金) 19:33:46

第五話「タイトルが思い付きませんでした」



暗く哀しき過去を持つアルカー。
一刻も早く帰りたいアルカーにとって如何でも良い上に、
ハタ迷惑なイベントが展開されようとしていた!
一刻も早くお家に帰ってワラゲッチャーを見たいと切実に願う彼の精神は限界に達そうとしていた。〆(・ω・´)


ぐつぐつぐつ・・・。
そして、三人は鍋を囲んでいた。
主役は倒したばかりのゾンビの新鮮なお肉、
彩るはよしのさくらの持っていたキノコや山菜、
プセルの持って来ていたアイボールの目玉である。
ふぞろいの彼らが作る熊鍋は矢張りふぞろいなものだ。


【腹が減っては戦は出来ぬ】
一刻前の彼らが体現して見せた言葉だ。
アルカーの口車に乗せられて、よしのさくらと対峙したプセルであったのだが、
丸一日掛けて登山に臨んでいた為に体の限界をグゥ~!と腹の音が知らせて来たのだ。
意気旺盛に構えた矢先の出来事はこの上ない滑稽さを醸し出し、
殺意の渦は笑いの渦に変わってしまい、対峙していたよしのさくらでさえ飲み込んだ。


彼らは早急に休戦協定を結び、各々の持っている食材と熊肉で腹ごしらえをする事にした。
とはいえ、いざ三人で鍋を囲んでみるとプセルにとって居心地の良い状況になる筈もない。
因縁ありきの忍者は寡黙であり、その忍者と共にいる馬の骨も中々助け船を出してはくれない。
「あ、そういえば、この辺りで剣士風な若い女性を見ませんでしたか?」
沈黙に耐え切れなくなったのか、自分の起こしたこの異様な状況に申し訳なさを感じたのか、プセルが口を開いた。
「いや、見てないなぁ。」
馬の骨が素っ気無く応えると、
「凶暴なゾンビの出る山だ。人と別れるには良いが探すなり会うなりは難しい場所だな。」
忍者も口を開き、
「ははっ!今頃はゾンビに食われてるってか?」
馬の骨は茶化すので場の空気が少し柔らかくなる。
「そういう事もぁりぇますね。」
よしのさくらの言葉の後、機を逃さずプセルも加わる。
「確かに。アルカーさんも食べられそうになってましたものね。」
自分をなじる言葉にアルカーは、
「ち、違うよ!こんなゾンビ、本当はパンチで一発だったよ!?
格好良くカウンター狙ってたらプセルさんが来たから見せ場を譲ったんだよ!('ω';)」
これでもか!と言わんばかりに宿敵ゾンビ(の肉)を口の中で食い千切りながら虚勢を張った。
「あらあらまぁまぁ。」
プセルは笑顔で受け流すがアルカーは小馬鹿にされた感じがして、ちょっと傷付いた。
「それにしてもゾンビ肉って固いんですね。それにあまり美味しく感じられません。」
「ゾンビ肉は時期による。今の時期はあまり美味くないんだ。」
「へぇ。俺はアイボールの目玉が意外とイケる事に驚いてるぜ。」
「目玉を食べると頭が良くなるって言いますよ。」
「なんで俺の方を向いて言うのかな?かな?('ω'♯)」
プセルとしてはよしのさくらよりアルカーの方が話し掛けやすかったと言うのが理由なのだが、
アルカーにとっては軽んじた言葉にも聞こえた。
「と、ところでこのキノコも美味しいですね。」
話を逸らす為にプセルが言う。
「特に美味いのを厳選したつもりだ。」
溜息混じりによしのさくらが言うと、
「へっ!毒キノコじゃねぇだろうな?」
アルカーがお約束のように茶化しに入る。
「お前に比べれば食べられるキノコだ。」
「あん?(゚д゚ )」
「口から幾らでも毒を吐く奴だからな。煮込めば相当な毒が採れそうだ。」
よしのさくら本人は無表情のつもりだろうが口元は笑っている。
「ははっ!お前、頭蓋骨とか陥没させたいわぁ♪(*'ω'*#)」
彼等はそんな和やかな時を過ごした。


空腹と戦意が同時に満たされる訳も無く、
結局、彼等の休戦は山を降り切るまでと約束され、三人は歩を進めた。


そして、その三人を草むらの陰から睨み付け、憎悪の炎を燃やす男が・・・。


この男、名をポケジンという。
モンスターを使役して戦わせる事で、
自分は戦わず、楽して富を得ようと考える悪どい男である。
「あ、あいつらぁ~!よくも俺のゾンビを~っ!」
プセルの退治したゾンビはポケジンの放ったものだったのだ。
ポケジンはハンカチを噛み、のたうち回りながら悔しがる。
「挙句の果てにゾンビを食った上で美味しくないだと!?ぜってぇ許さねぇ!」
怒りのあまり、ハンカチを握る腕に力が入り過ぎて歯が抜けた。


やっと面倒なイベントを乗り越えて山を降りるアルカー!
人をほっこりとさせる関係になった三人はこれからどうなって行くのか!?
アルカーは無事にワラゲッチャーにありつけるのか!?
そして、差し歯を余儀無くされたポケジンは復讐を果たせるのか!?次回、乞う御期待!〆(・ω・´)