エファンタジー/第十一話「炎の騎士、散る」

Last-modified: 2023-03-02 (木) 06:26:29

第十一話「炎の騎士、散る」



暗く哀しい過去を持ち、最近シリアスに目覚めたアルカー!
彼は自分を襲った女を護る為に、謎の騎士団を相手に銃を構えるという異様な状況下にあった!
ふえうとVieliが見守る中、非情の女騎士Eselin率いる騎士団とどう渡り合うつもりなのか!?〆(・ω・´)


ガァァァァァンッ!!
鉄が鉄に勢い良くぶつかった音だ。
幾度となく刻んだ事のある音は、己の心を奮わせて、敵を恐怖に震わせる。


最初に狙ったのは縦並びの二人目。
指揮の為か、規律の為か、そんなものは知らないが、
直線的な銃を前に縦並びのお馬鹿さん。
人の影いりゃ安心かな?前立つ者が守ってくれるとは限らない。
危機迫りしと知るのなら、あなやあなやと身をかわす。それが哀しき人の性。
眼前の人間が何かを避けたと思った頃には、後の祭り、血の祭り。


大抵の物事は最初が肝要だ。
手加減無しの銃撃は鉄の鎧をへこませて、鎧の重さも御構い無しに、遠くに遠くにぶっ飛ばす。
その事をいちいち最初に教えておいてやれば、相手もびびってかかってき難くなるもんだ。
アルカーのそんな考えの下の行動は功を成したようだ。


「おのれぇ・・・!」
アルカーの放った弾を咄嗟に避けてしまい、
後ろの仲間に当たらせてしまった騎士が口惜しそうに睨み付ける。
「案外と間抜けだなぁ?おい?
人影に居りゃぁ前も見えねぇ。
避けれるものも避けれねぇぜ?(っ゚Д゚)┳」
ふっと硝煙を吹き散らしながらアルカーは相手の反省点をわざわざ語ってみせる。
戦いを常とする騎士団に素人の戦術指南は失礼極まりない。つまり挑発だ。
「くっ・・・!」
殺意に塗れた目で睨み付けるも、近寄らずに歯を軋らせている辺り、
弾丸の重さと速さはしっかりと騎士団に刻まれたようだ。


「散開して取り囲め!」
騒然、躊躇、沈黙の時来れば、口火を切るは矢張りEselin。
その判断は極めて早く、アルカーに取って最も厄介な戦法を挙げる。
「「「はっ!」」」
迂闊で臆病な騎士達もEselinの声が掛かれば迅速緻密で屈強だ。
「ちっ!(♯゚Д゚)┳」
自分を中心に捉える円を描く布陣に、あっという間に取り囲まれてしまうアルカー。
「奇数番、掛かれ!」
恐らく指令を出す際の為に騎士達には番号が振ってあったのだろう。
半分を残して、もう半分の騎士達が剣を構えて四方八方からアルカーに突撃してくる。
銃は直線的な武器故に包囲攻撃に対応出来ない。
鉄の包囲が、抗う術の無いアルカーを包み込む。


「ぎゃあああああっ?!」
鉄を纏った男達の突撃終着点から苦痛に満ちた悲鳴が飛ぶ。


「やったか!?」
怨敵の死を確認するEselinの声。
それに対して、確かな手応え有り!我等の働きを御覧あれ!
と、見せ付けるかのように獲物からゆっくりと離れる騎士達。
「ぐぇぇっ!」
そして、鉄の包囲を解く騎士達の中心で断末魔をあげながら男は崩れ落ちた。
「「「!?」」」
しかし、よく見ると、それはアルカーではなく、見知らぬ男だった。
「なにっ!?誰だコイツは!?」
騎士団一同騒然の中、聞き覚えのある声が飄々として響く。
「残念だったな。そいつは俺が呼んだ商人だ。(っ゚Д゚)┳.o0覚えてて良かったマーチャントコール!」
声の主はアルカー。
そう、彼は取り囲まれた刹那、瞬時に商人を呼び出す技を使って騎士達の目を欺いていたのだ。
そして、当の本人は銃撃の反動を利用して跳躍、騎士達の隙間を縫って離れた場所にいた。
「うぜぇぇぇぇぇっ!!」
「姑息なっ!」
アルカーの立ち回りに騎士達は非難囂々、
「へっ!数に物言わせる誇り高き騎士様どもがほざいてくれるなよ?(っ゚Д゚)┳」
それをも舌先で払うアルカーは絶好調。
「オラオラ!浮き足立ってりゃあ、その足でそのまま天国まで浮かび上がるぜ?(っ゚ω゚)┳* 三 ●)Д゚;)ギャアアア!?」
強く速く硬い、それでいて不意打ち気味の弾丸はまた一人と騎士をあの世へ御招待。


「あれ?アルカーってちょっと格好良くないですか・・・?('д'//)」
「え?(・∀・ )」
思った事がそのまま口から出るのがVieliという女だ。
そんな女の呟きをふえうは聞き逃さなかった。
「あ、いや、ちょっと!ちょっとだけですよ!
あんな表六玉(ひょうろくだま)でも、ちょっとは格好良い所がありやがるって事ですよ!('д'//)」
悪態ついてそっぽ向く、今の表情をふえうに見られるのが癪だからだ。
しかし、そんな彼女の仕草は耳まで赤くなっている事を曝してしまう。
「くふふっ・・・♪(ノ∀・*)」
ワラゲッチャースーツ(女性用)をその身に纏い、
ワラゲッチャーVのテーマを熱唱している所を撮られ、
涙目で山を登って来た男、そして、そういった男に対して頬を染めた女。
知らないという事は幸せな事だ。
ふえうは込み上げる笑いを抑え、身を捩った。


「ちぃっ!忌々しい奴めっ!全員で取り囲んで叩け!今度は隙間を作るな!」
大見栄と啖呵を切った男は、口先以上に立ち回り、男の連れは騎士団を前に浮付いた寸劇までして見せる。
なめられているっ・・・!流石に憤慨を隠し切れなくなったEselinは最も確実なやり方を指示する。
「「「はっ!」」」
手負い狼は死ぬまで噛み付く。仲間が倒れる度に、数が減れば減る程に、反比例して強くなる。
騎士団は先程のそれより更にも増した屈強さをもって円描く布陣を作り上げる。
同じ手は二度は食わぬ騎士団に絶体絶命アルカー。だが・・・?
「はんっ!そいつを待ってたぜ・・・!(っ゚Д゚)┳.o0焦って、まとまって掛かって来る、この時をな!」
鉄の包囲が迫る中、彼は不敵さと決死さが織り交ざった複雑な笑みを浮かべ、
銃口に異常な量の弾と火薬を吐き出す程に飲ませる。


「何だっ!?」
「何をしている!?」
馬鹿な!狂ったように火薬を詰めた?!そんな状態で撃てる訳が無い!もし、撃とうものならば・・・まさかっ!?
アルカーの奇行に面食らっていた騎士達の思考に恐怖が迸る。


自らを取り囲む鉄の男達の不安と恐怖に引き攣った表情を合図に、
「爆ぜろ!ダイイングファイアー!ヽ(゚Д゚♯)ノバババババッ!!」
アルカーの叫びと眩い光が空間を支配する。
「なっ・・・にっ!?」
「ぅわっ!?」
「ウボアアアアア!?」
「ひぃぃっ!?」
「ぎゃああああっ!?」
驚愕と絶望の混じった悲鳴の数々が熊の山を舞台とした哀歌(エレジー)を奏でる。
爆裂する銃と弾が作り出す無数の破片が、幾多の刃となり、騎士団に突き刺さったのだ。
「へぶらぁぁぁぁぁぉぉぉぉぉっ!?ヽ(゚Д。;)ノ」
その中で一際の旋律を奏でるのが演奏指揮者たるアルカー。
爆心地にあった彼には騎士達とは比べ物にならない数の刃が突き刺さる。
「あ、アルカー!なんて無茶しやがるのです!?('Д';)」


そして、爆炎の起こした硝煙の中に、立ち続ける人影は一つも無かった・・・。


誰かの命を護る為、その身を焦がし、爆ぜる者!その行いに我々は真の騎士の姿を見た!
誉れ高き彼の名は炎の騎士アルカー!これは流石に死んだか!?
騎士達を失った非情の女騎士Eselinの胸中にあるものは!?
残されたふえうとVieliは、Eselinを退ける事が出来るのか!?次回!乞う、御期待!〆(・ω・´)