絹田 橙

Last-modified: 2015-12-30 (水) 22:08:01

無題1.jpg
■設定■
絹田 橙(きぬた だいだい)
「私は今日、大変な事に気がついてしまった。誰も見た事の無いはずの見えない運命の赤い糸が『赤い』なんて、運命の赤い糸は―、存在する。」
恋に恋する二十九歳、家事手伝い。行動範囲は緑の看板のコンビニまで。アウトギリギリ、ギリギリアウト。
目元のほくろがチャームポイントでセールスポイントだが、買い手はコンビニまでの50mにはまだ落ちていない。目元のほくろがセクシーだね、と言ってくれた中学生時代の初恋の彼の言葉は今も目を閉じれば再生出来る。ノイズ混じりにはなってしまったけれども。
ある朝ふと思い立ち、坂を登って一駅先にある、青い看板のコンビニまで足を運んだ。レジに立つのはどこか見覚えのある男性。レンジのチンの音と共に、ノイズは晴れる。その瞬間、おにぎりを抱えて走り出し坂を下って家へ戻った。
自室の壁にもたれ、胸に手をあて、息を整える。小指を立てると、1cmほどの硝子の隙間を通り、窓の外へ飛び出す赤い糸が少しだけ、見えた、そんな気がした。
おにぎりを万引きしてしまった事に気がつくのはもう少しだけ、先。