気候と植生

Last-modified: 2019-10-27 (日) 20:58:27

「ケッペンの気候区分」ハ、ドイツの気候学者ウラジミール・ピーター・ケッペンが植物の分布に注目して考案しタ、気温と降水量に基づいた気候の分類方法だヨ。学校の地理の授業で習った人も多いんじゃないかナ。
赤道から極地に向けて5つの気候帯に分けられていテ、それぞれ熱帯(A)、乾燥帯(B)、温帯(C)、亜寒帯(D)、寒帯(E)と呼ぶんダ(後から高山気候(H)も追加されたヨ)。各気候帯はさらにいくつかの気候区へ分類されるヨ。
これらの気候帯ハ、樹木が育つ樹林気候(A・C・D)ト、育たない無樹林気候(B・E)に大きく分けられるヨ。

熱帯(A)

最寒月の平均気温が18度を上回る、南北の回帰線(赤道傾斜角を示す緯線)の間に収まる気候帯。貿易風をもたらす赤道低圧帯(熱帯収束帯)の移動によって雨量が左右される。日射量の多さから気候は温暖で上昇気流が発生しやすく、基本的には雨量が豊富。

熱帯雨林気候(Af)

太陽が高くまで昇るため気温が高く、水分の蒸発量も多くなるため湿度も高い。低緯度地域ゆえ年間で昼間の長さがあまり変わらず、赤道低圧帯の影響で雲も発生しやすいため、日照時間は長くない。気温が上昇する昼頃には海上で積乱雲が発達し、昼過ぎにはスコールとなって陸地にも強い風雨をもたらす。
発達した河川の流域には広葉樹が3~5層に分かれて生育し、高さ数十メートルの熱帯雨林を形成する。
生物の多様性に富み、世界の生物種の半数以上が熱帯雨林に暮らしているとも言われる。森林の7割は樹木が占めており、それらの幹に張りつく着生植物も多い。また、樹冠(樹木の葉が茂る部分)が形作る食料豊富な林冠層は、地表から離れて複雑かつ独特の樹冠生態系を生み出している。上層で暮らす動物は小型であったり、跳躍・滑空や飛行などの移動能力に秀でたものが多い。
樹冠で日光が遮られるため、地表の植物は生育しにくく、地上の大型動物にとっては移動しやすい環境となっているが、何らかの理由で日射量が確保されればその限りではない。
植生が豊かな反面、気温の高さと分解の早さから落葉等の腐植が起こりにくく(常緑樹が多く落葉自体が少ない)、多量の降水によって養分も流れてしまうため、土壌は痩せており、酸化鉄を含んだ赤土が多い。

熱帯モンスーン気候(Am)

またの名を「弱い乾季のある熱帯雨林気候」。夏には低緯度の海から多湿な季節風が、冬には高緯度の大陸側から乾燥した季節風が吹く気候区。海と陸の分布や、緯度帯ごとの大気循環の影響を受け、分布には偏りが見られる。
夏に吹く海からの季節風は大陸沿岸(特に東岸)に湿った空気を運んで雨季をもたらし、冬には大陸側からの乾燥した季節風が乾季をもたらす。

サバナ気候(Aw)

夏は赤道低圧帯の下で湿潤な雨季を過ごすが、日照の変化する冬には亜熱帯高圧帯がもたらす乾燥した下降気流の影響を受けて、ほとんど降水のない乾季が到来する。冬でも最高気温が30度に迫る日がある。
長草草原の中に、乾燥に強い樹木(バオバブやアカシアなど)が点在する。冬には長期の乾燥で葉が落ち、草は枯れ、赤茶けた風景が広がる。土壌は赤土ないしは赤黄色土。
大型の草食動物が数多く生息し、それらを狩る肉食動物も見られる。
地中海性気候(Cs)と対照的な気候区。

乾燥帯(B)

「乾燥限界」を計算することで真っ先に区分される気候帯。降水量が、一般的な樹木の生育に最低限必要な量を下回っており、草原や砂漠が広がる気候帯。
普段は干上がっていて、雨季に姿を現す涸川(かれがわ)を「ワジ」と呼ぶ。地下水や河川などの水源近くには「オアシス」と呼ばれる緑地が形成され、樹木も生育する。

砂漠気候(BW)

赤道付近で暖められた空気が上昇し、中緯度で循環することで生まれる亜熱帯高圧帯がもたらす、高温かつ乾燥した下降気流によって形成される乾いた大地。また、雲の届かない内陸部の盆地などにも見られる。
多くは岩石砂漠(ハマダ)や礫砂漠(レグ)で、そこから強風によって運ばれた砂が堆積した砂砂漠(エルグ)は、砂漠に分類される地域の中でも2割程度である。
年中高気圧に晒される、雲の発生しにくい地域で、雨は極端に少なく、降水は不定期(降る時はまとまって大量に降る)。連日晴天で日中は高温となり、夜間は放射冷却が顕著で冷え込む。海岸砂漠など、地理的な条件によっては霧としてある程度の水分が供給される場所もある。
湿潤な地域から流れてくる外来河川も存在し、その多くは砂漠の土壌から塩分を取り込んで塩湖を形成する。一方で、海まで続くような大河は砂漠地帯における水の供給源として機能し、人類の古代文明のいくつかはこうした河川によって育まれたものである。
植生は、アカシアのように深く根を下ろして主に地中から水分を得るもの、内部組織に大量の水分を蓄える多肉植物、降雨で急速に成長し種子を残して枯れるものに大別される。

ステップ気候(BS)

砂漠気候区の周辺に分布する、樹木の少ない平原。乾季と雨季があり、雨季には豪雨も見られる。乾季の間は乾燥した晴天が多く(日本の秋晴れに近い)、砂漠に次いで昼夜の気温差は大きい。土壌は主に栗色で、特に肥沃な地域には黒土も見られる。
牧畜や耕作が可能な反面、これらの活動が土地の回復力を超えることで砂漠化を誘発する。
乾燥に耐えうる植物が自生し、短草草原(ステップ)を形成する。夏には植物の多くが根を残して枯れる。

温帯(C)

最も寒い月の平均気温が18度未満・-3度以上の気候帯。

地中海性気候(Cs)

夏季乾燥型。夏季は亜熱帯高圧帯の影響を受け、日差しが強く乾燥する。冬季は亜寒帯低圧帯と、暖流から水分を供給された偏西風の影響で降水が多め。
気温や降水量は森林を育てるのに十分で、冬でも冷え込みは厳しくないため、常緑広葉樹林が見られる。ただし植物がよく育つ温暖な時期に乾燥がちになるため、オリーブやコルクガシといった耐乾性の硬葉樹林が一般的(樹高は15mほど)。柑橘類の生産にも適している。
サバナ気候(Aw)と対照的。

温帯夏雨気候(Cw)

冬季乾燥型。夏は海からの温暖湿潤な季節風の影響で高温多雨。冬は大陸からの風で乾燥気味になるが、冷え込むことはない。サバナ気候区とは特徴が近く、同緯度の地域でも標高差によって気候区が分かれている。
低緯度の地域ではシイ・カシ・クスなどの常緑広葉樹の照葉樹林が目立つ。高緯度の地域では落葉樹や針葉樹も分布する。

温暖湿潤気候(Cfa)

温帯の中では夏の暑さと、年間降水量の多さが特徴。季節風の影響で気温の年較差は大きく、四季が明瞭。
降水は年中見られ、特に夏から秋にかけては台風などの熱帯低気圧が襲来する。冬は気温が下がり、雨がやや少なくなる。
常緑広葉樹・落葉広葉樹と針葉樹の混交林。ケッペンの気候区分において日本はほぼ温帯湿潤気候か冷帯湿潤気候に属しているとされる。

西岸海洋性気候(Cfb, Cfc)

海洋性気候のひとつ。亜寒帯低圧帯(偏西風)の影響で年中湿潤。同緯度に位置する大陸の東岸に比べて、夏は冷涼で、冬は暖流から熱が供給されるため比較的温暖。降水量は温帯にしてはやや少ないが、気温と共に季節変化は小さい。
ブナ・カシ・ニレ・オークなどの落葉広葉樹が多く、高地では常緑針葉樹との混交林も見られる。
腐植層の厚い褐色森林土が分布している。

亜寒帯(D)

最寒月の平均気温が-3度を下回り、積雪が根雪になる気候帯。最暖月は平均気温が10度を超え、樹林気候の中では年間の寒暖差が最も大きい。

亜寒帯湿潤気候(Df)

大陸性気候が発達、気温の年較差が大きい。夏は短く高温、冬は長く低温。
降水量は少なめで年間の変化も小さい。
南部は混交林、北部は針葉樹林(タイガ)

亜寒帯冬季少雨気候(Dw)

気温の年較差がきわめて大きく、長い冬季の間は乾燥気味で、地域によっては氷雪気候区に匹敵する寒さがもたらされる。降水は夏に集中。
針葉樹林帯(タイガ)が発達し、モミやトウヒのような常緑針葉樹、カラマツなどの落葉針葉樹、カバノキやヤマナラシといった広葉樹が、それぞれ純林を形成している。
夏に永久凍土から融け出た水分で生長する。
北部はツンドラと隣り合っている。
寒さで土壌の有機分解が進まず、表層は養分が流されて灰白色になっている。

寒帯(E)

最暖月の平均気温が10度を下回る気候帯。降水量は関係なしに、寒さで樹木が育たない。植物は蘚苔類や地衣類(藻類と共生する菌類)が見られる程度。
極地に近い高緯度地域の他に、標高の高い場所(高山気候)でも寒帯と同様の植生が見られる。

ツンドラ気候(ET)

永久凍土が広がっており、地中の水分が凍結と融解を繰り返すことで独特の地形を生んでいる。夏季には雪や氷が融けて地表が現れ、菌類やコケの仲間が地面を覆い、場所によっては灌木も育つ。
寒さに適応した生物(種は少ないが個体数はそれなり)が定住し、生態系は氷雪気候区よりもいくらか多様。北極ツンドラには草食・肉食動物ともに数種類が生息している。南極ツンドラには海鳥や海洋生物のみが生息し、大型の陸生成物は存在しない。
極高圧帯(低温の大気が下降気流となって地表が高気圧となる地域)の影響でよく晴れるため降雪は少なく、春と秋に若干の降水がある。
赤道付近の高山でもツンドラ気候に似た環境の場所(高山気候)が存在する。いずれもヒトが定住できるギリギリの環境。

氷雪気候(EF)

最暖月の平均気温が0度を下回る、雪と氷に閉ざされた気候区。降雪はほとんど見られず、それでも融雪量がさらに下回るため、氷河が形成される。月に数回の頻度でブリザード(暴風雪)が吹き荒れるため植物が根付かず、わずかな地域で暮らす動物はいずれも肉食。
無居住地域(アネクメーネ)の名のとおり、ヒトが暮らせる場所ではない。