本編/M-1☆/第13回/書き起こし/後戸パフォーマー

Last-modified: 2019-04-03 (水) 02:09:02
Tag: 写経

 N「笑いの踊り子」
 N「後戸の踊り子が、東方M-1に新風を吹き込む!初出場で見事決勝進出!」
 N「今、その知られざる漫才パフォーマンスがベールを脱ぐ!」
 N「エントリーNo.146番『後戸パフォーマー』」


(♪クレイジーバックダンサーズ)
2人「「どうもー!」」
里乃「人は、必ず、死にます!『後戸パフォーマー』です、宜しくお願いします……あ、ああ、拍手有難う御座います……一部の心無いファンの方々もね」
 舞「心無い事は無いでしょう」
里乃「拍手をして下さいまして」
 舞「拍手して貰って『心無い』って言わないで下さい」
里乃「有難う御座います……まあそう言うね、私達も永く生きてますから」
 舞「そうですね」
里乃「これからは、こう……『死』を意識して生きて行かないと行けませんね」
 舞「そんな事は無いよ、僕等は人間じゃ無いんだから、『死』を意識しなくても良い」
里乃「いや、それでも死ぬ時は死にますよ、不慮の事故でね」
 舞「何、縁起でも無い」
里乃「あの、これ……今まで舞には秘密にしてたんだけど」
 舞「うん」
里乃「私から見て……」
 舞「うん」
里乃「3人目の『(てい)(れい)()』なのよ」
 舞「……は?どう言う事」
里乃「死んだのよ、前の2人は」
 舞「え!?」
里乃「だから舞は、3人目の相方だって言ってんのよ、私から見て」
 舞「ええ、そうなんだ?僕、3人目?」
里乃「うん、その『僕』って言い方もね、前任者は『僕』なんて言って無かった」
 舞「何て言ってたの」
里乃「『(それがし)は』って言ってた」
 舞「嘘()け!『某は』って言う、普通?」
里乃「ま、兎も角、私は2度相方に先立たれた」
 舞「そうなんだ……」
里乃「舞はドジじゃん」
 舞「うん」
里乃「おっちょこちょいじゃん」
 舞「うん……まあまあ、気を付けたいけどね」
里乃「って事は、向こう10年以内には死ぬって事よ」
 舞「そんな事無いよ、縁起でも無い」
里乃「うん」
 舞「向こう10年、死なないよ?僕は」
里乃「いやあ、あの、舞には死相が出てる」
 舞「出て無いよ、失礼な」
里乃「今、スマフォの待ち受け死神だったよね」
 舞「した事無いよ、どんなよスマフォの待ち受け死神って、君」
里乃「こういう、鎌みたいの持ってる」
 舞「それ、死神だけど……」
里乃「でも、だから、ほら、舞が何時死んでも良い様にね、舞のお葬式でね、弔辞を読ませて貰いたい」
 舞「良いってそんなの、弔辞とか読まなくて良いよ」
里乃「だから、舞の弔辞を」
 舞「うん」
里乃「ずっと考えてた」
 舞「友人代表とかで読む奴でしょう」
里乃「そうそうそう、それしか考えて無い」
 舞「もっと有るでしょ、考える事他に!」
里乃「『早く死なないかなあ』って」
 舞「『死なないかなあ』じゃ無いって、弔辞読みたいみたいになってる」
里乃「弔辞、読みたいのよ」
 舞「いや、頼まないよ(そもそ)も、君には」
里乃「じゃあ、他誰に頼むのよ」
 舞「いや、お師匠様に頼むよ、君は巫山戯(ふざけ)るもん、絶対……絶対巫山戯るタイプだもん」
里乃「舞さあ……()してや私は『舞台上』では巫山戯るよ」
 舞「うんうん」
里乃「『お葬式』よ」
 舞「うん、お葬式よ」
里乃「そんな、お葬式で……」
 舞「うん」
里乃「人が……w」
 舞「うん……w」
里乃「一杯見てる前で……www」
 舞「巫山戯る気、満々じゃん!想像して笑ってるじゃん、自分で」
里乃「いや、ふざけない」
 舞「本当?」
里乃「うん」
 舞「んじゃあ、それだったら……まあまあ」
里乃「ちょっと、じゃあ……1回軽くリハーサルしとこう」
 舞「リハーサルとか、縁起でも無いよ」
里乃「明日、死ぬかもしれないし」
 舞「……いや、まあまあ、確率で言うと(ゼロ)では無いけどね」
里乃「だから、ちょっと、本番(さなが)らで弔辞を読むから……もう丸暗記してるから」
 舞「フフッ…www丸暗記してるの」
里乃「うん、毎日便箋に書いてるから」
 舞「止めて、気持ち悪い」
里乃「繰り返し、繰り返し」
 舞「繰り返し……って『死ね』って願ってるじゃん!」
里乃「便箋、10札使った」
 舞「大分、掛かったねえ……まあ良いわ」
里乃「じゃ、本番宛らで」
 舞「宛らでお願いします」


(里乃、弔辞を持ち棺桶の前に立つ)
(舞、経帷子を纏い里乃の横に立つ)
里乃「ん?」
 舞「お?」
(間)
里乃「ん?」
 舞「おお?」
(間)
里乃「どうした」
 舞「どうしたの、弔辞を読みなさいよ」
里乃「舞さあ、本番も私の横に立っとく気なの」
 舞「そんな事無いよ、死んでるんだから」
里乃「吃驚(びっくり)するよ、皆」
 舞「いやあ……」
里乃「死んでる人が、何か突っ立ってる」
 舞「それは怖いよ、確かに」
里乃「『立ってる!』ってなるよ」
 舞「いや、なるよそれは、ただほら、今は良い……」
里乃「舞、『本番宛ら』って言ったでしょう」
 舞「今、生きてるからさあ」
里乃「生きながらにして死んでる見たいな物じゃないか」
 舞「何て言う言い種よ!君もそうじゃんか、それなら……如何したら良いの、じゃあ」
里乃「棺桶に入ってるでしょう」
 舞「ええー?」
里乃「棺桶に入っててよ」
 舞「もう……」
里乃「うん……鼻とか耳に何か詰め物して良い?」
 舞「やり過ぎだよ、息出来なくなるじゃん!」
里乃「では、弔辞を……」


里乃(咳払い、吸い込み)
里乃「キョウダァイ……」
 舞「可笑(おか)しいじゃん!」
里乃「おお!?」
 舞「可笑しいじゃん!ほら、ボケて来た」
里乃「何よ?」
 舞「『何よ?』じゃ無いよ、キョウダァイ……可笑しいじゃん、入りが」
里乃「どっちが可笑しいと思う」
 舞「どっちが……そっちが可笑しいじゃん」
里乃「『兄弟』って言った人と」
 舞「うん」
里乃「『可笑しいじゃん!』って」
 舞「うん」
里乃「棺桶からバッ!って出てくる人」
 舞「いや……」
里乃「どっちが可笑しいと思う」
 舞「それは……こっちが可……いや兄弟って言うのも可笑しいでしょう」
里乃「物凄い、パニックよ!式場内、『可笑しいじゃん!』って、いやお前が可笑しいだろうって」
 舞「って、なるなるなるなる、式場はなるね、それはなる……ただ『兄弟』も可笑しいよ、兄弟じゃ無いよねって、声も変えてたよね、何か」
里乃「何かやっぱ、そういうVシネマみたいなイメージあるじゃん」
 舞「いや、無いよ、葬式にVシネマのイメージなんて」
里乃「『兄弟分が死んで~』みたいな」
 舞「それ、Vシネマでしょう……あっ、僕等別に兄弟じゃ無いから、況してや姉妹でも無い」
里乃「何と呼べば良いの」
 舞「いや、名前でしょう、そこは」
里乃「名前?」
 舞「『舞』でいいよ」
里乃「『舞』ね……」


里乃(咳払い、吸い込み)
里乃「舞ちゃぁん……馬鹿野郎!……寂しいぜ舞ちゃん!……私みたいな……クソみたいな奴でも……クソみたいな人生だったけど……唯一輝いてる時間があったぜ」
 舞「そのキャラ何だよ!?」
里乃「うわああ!?怖いって!」
 舞「そのキャラ、何よ!?ずっとVシネマでやってるじゃん、『舞ちゃぁん』って」
里乃「そのキャラ可笑しいと思う、そっちのキャラの方が可笑しいって」
 舞「何『そっちのキャラ』って」
里乃「死んだ人が棺桶開けて、『そのキャラ可笑しいだろ』って言ってるのよ!」
 舞「いやあ、そ、それは……」
里乃「想像して!」
 舞「うん……」
里乃「ちょっと死……死んだ人が」
 舞「うん」
里乃「いきなり棺桶開けて」
 舞「うん」
里乃「『可笑しいだろ』って言ってるの、想像して」
 舞「うん……」
里乃「想像して!その間私踊ってるから」
(里乃、踊る)
 舞「邪魔、それ!踊りが邪魔!」
里乃「可笑しいって!」
 舞「可笑しいのは判ったけど、そのキャラは……」
里乃「このキャラで行くわ!」
 舞「もう行くのね……」
里乃「我慢して死ね!」
 舞「死ねって……」


里乃(咳払い、吸い込み)
里乃「キョウダァイ……最期に……もう1回兄弟と……漫才がしたい……良いよな?……とびっきりのネタ考えて来たから……な?……最期にやろう!……キョウダァイ……」


(里乃、舞の右手を自身の肩に回し共に立つ)
里乃「キョウダァイ……!キョウダァイ……関節が……固い!……キョウダァイ……兄弟行くぞ!……はい、どうもー!後戸パフォーマーでーす!よろしくお願いしまーす!頑張って行こうね!おい無視すんな!無視すんなよぉ!何だお前無視して!オメーは!死んでんのか!」
 舞「いや、死んでるわお前!」
里乃「うわああ!?」
 舞「良い加減にしなさい!」
里乃「有難う御座いましたー」