先物取引において成功を収めるのに欠くことのできない3要素とは、①価格予測、②売買タイミング、③マネー・マネジメントである。
最初にマネーマネジメントについて述べるのは、適切なトレードを決定する際に、まず考慮するべきことであるからである。
Contents |
マネー・マネジメントの一般的ガイドライン
ポートフォリオ・マネジメントは、非常に複雑な問題を含むものだけに、取組み姿勢によっては、統計学の先端的方法が必要とされる場合もある。しかしここでは、比較的簡単なレベルにとどめる。次にあげるのは、一般的なガイドラインであり、ファンド・アロケーションや、トレード金額の許容範囲を決めるのに役立つ。
これらのガイドラインは、業界でかなり標準的なものであるが、それぞれのトレーダーの事情で修正することができる。トレーダーの中には、攻撃的で、大きなポジションをとる者もいれば、逆に保守的な者もいる。重要なことは、何らかのリスク分散により損をしている間の資本の流出防止策を講ずることである。
- 投資の合計金額は資金の50%を限度とし、残りはトレジャリー・ビル(米財務省短期証券)で運用せよ。つまり、資金の50%以上はいかなるときも余裕として残し、負けたときのリザーブとしておくべきである。例えば、10万ドルのアカウントであれば、トレード金額の限度は半分の5万ドルである。
- 一つのマーケットに投資する金額は、資金の10%から15%を限度とせよ。したがって、10万ドルのアカウントであれば、一つのマーケットで証拠金として仕えるのは1万ドルから1万5000ドルということになる。こうすれば、一度のトレードに過大な資金を投資して破滅にいたることは防げる。
- 一つのマーケットに対するリスク金額は、資金の5%以内にせよ。この5%は、トレードが上手くいかなかったときに発生する損の限度となる。何コントラクト売買し、ストップ・ロス・オーダーはどこにおくべきかもここから決まってくる。10万ドルのアカウントであれば、1回のトレードで5000ドル以上のリスクを取ってはならない。
- 同種のマーケット・グループに対する証拠金は、総額で資金の20%から25%を限度とし、特定のマーケット・グループに深入りすることを避けよ。同種のグループに属するマーケットは、価格の動きも同様となりやすい。金と銀はともに貴金属のグループに属し、通常同方向に動く。同じグループ内のマーケットに全額投資することは、分散投資の原則に反する。同じグループに属するマーケット内でのトレードは、総合管理、調整の必要がある。
ポジションの金額
ポジションの大きさであるが、ここでは10%ルールを用いることにする。つまり、資金が10万ドルであればその10%、1万ドルをトレードの金額とすればよい。金の1コントラクト当たりの証拠金が2500ドルとすれば、ここでは1万ドルを2500ドルで割って、4コントラクトがトレードのサイズになる。トレジャリー・ボンドの証拠金が6000ドルであるとすれば、原則的には1コントラクトしかポジションをとれないことになる。2コントラクト(12%)のポジションを取ってよいか判断を求められるところだが、先に述べたのは単なるガイドラインである。状況に応じて、柔軟な対応が必要となるのは当然である。
投資の分散と集中
分散投資は、リスクを軽減するための一つの方法であるが、行き過ぎてもいけない。同時にあまりに多くのマーケットでトレードすると、損を出すトレードの数が増える結果、少々トレードで利益を出しても、結局薄まってしまう。適切なバランスが要求される。相互に独立したマーケットに分散するのは、同時に4~6を超えない範囲とするのが最適と思われる。ここで重要なのは、相互に独立しているということである。たとえば、4種類の通貨を同時に対ドルで買い持ちにしたのでは分散投資とはいいがたい。
プロテクティブ・ストップの使い方
プロアクティブ・ストップ(防御的な損切りオーダー)を使うことを強く勧めたい。ストップが近すぎるとマーケット・ノイズと呼ばれる小さな振れで、ストップが成立してしまうことがある。逆に、ストップをゆるく置けば、ノイズは避けられるものの、ストップがついた時には大きな損失を被ることになる。適切なポイントを探すことが大切である。
リスクと期待収益の比率
すぐれたトレーダーでも全トレードの勝率は40%といわれ、多くのトレードは損失に終わる。唯一儲ける方法は、負ける金額よりも勝つ金額を大きくするしか無い。この目的で、多くのトレーダーが参考とするのが、リスクと収益の比率(reward to risk ratio)である。トレードを検討するに際し、目標利益を設定し、さらにこの目標利益(リウォード)を、マーケットが逆に動いた時に被る損(リスク)と比較勘案するものである。よく使われる基準は、3対1のリウォード・トゥー・レイシオである。トレードをするにあたっては、期待利益が被るであろう損失の少なくとも3倍はなくてはならない。リスクを10ドルとしたならば、期待される収益は少なくとも30ドルは必要である。
トレンディング・ユニットとトレーディング・ユニットの使い分け
利益の乗っているポジションを持ち続けていくことはいうほど簡単ではない。突然トレンドが失速した場合にどうするべきなのか。
一つの解決法は、ポジションを使い分けて、常に複数のユニットでトレードをすることである。ポジションをトレーディング分と長期のトレンディング追求分の二つのユニットに分ける方法である。トレンド追求のほうは、長期保有を目的として、調整局面や持ち合い局面でも余裕のある甘めのプロアクティブ・ストップを設定する。これが、長い目でみて結局は最も大きな利益を生むポジションである。
一方、トレーディング分のポジションは、短期売買を特徴とする。価格が最初のターゲットやレジスタンスに届いたり、あるいは買われすぎの状況となったら、利食うかもしくは固めのストップを入れて利益を確定すべきである。マーケットが再びトレンドに沿って動き始めたら、手仕舞ったポジションを作り直せばよい。一つだけのユニットでトレードしたり、あるいは常に全額を一度にトレードするのは避けたほうが賢明である。複数のユニットでトレードすることで得られる柔軟性が、最終的な実績に大きな差をもたらすのである。
成功や逆境が続いた後にすべきこと
トレーダーの戦績は、価格チャート同様、山あり 谷ありである。バランスを閉めて儲かっているのは、株式の場合であればトレンドが上昇方向にあるからであろう。しかし、すでに勝ち続けた後というのはポジションを増やすタイミングとしては最悪である。上昇トレンドで買われすぎた時に買いを入れるのと同じこととなる。したがって、賢明な方法は(自然に反することではあるが)、株価が下落した後でポジションを増やし始めることである。こうすれば、ポジションのコストが相場のピークではなく、谷に近いものとなる可能性が高まる。
マネー・マネジメントのむずかしさと重要性
「もし、マネー・マネジメントの分野が、熟考を要し、ジレンマと矛盾に満ち、欲求不満の残る対象分野であることが理解されたとすれば、大きな進歩である。生き残りに必要な基本的なルールのほとんどは、マネー・マネジメントの分野にあるのだが、いまだこの分野に関心を持つトレーダーは少ない。大半のトレーダーの関心は、むしろ、トレーディング自体にあるのである」
トレーディングのガイドライン要約
マネー・マネジメントとトレーディングの主要な留意点を以下に列挙してみた。
- 中期トレンドに沿って取引をする。
- 上昇トレンドでは、押し目買い、下降トレンドでは戻り売り。
- 利食いは遅く、損切りは早く。
- 常にプロアクティブ・ストップ・オーダーを使って損失を限定する。
- 衝動的に取引せず、計画的に行う。
- 計画は慎重に考えて。
- マネー・マネジメントの原則に従う。
- リスク分散する。ただし、度を越してはいけない。
- 期待収益に対するリスクの割合は、少なくとも3対1を確保する。
- ポジションの積み増し(ピラミッド)に際しては、次のガイド・ラインに従う。
- 新規積み増し分はその都度前回より少額とする。
- 勝っているポジションのみ積み増す。
- 負けているポジションは積み増さない。
- ストップはできるだけブレイク・イーブン・ポイント(コストがゼロとなる点)にくるよう調整する。
- マージン・コールに応じてはならない。損に追証は不要。
- マージン・コールを防ぐために、必要とされるマージンの少なくとも75%は株式にする。
- 両方あるときは、負けているポジションを勝っているものより先に締める。
- ごく短期のトレーディングでない限り、意思決定はマーケットから離れて、できればマーケットが閉じている時に行う。
- まず長期的視点から入って短期を考える。
- マーケットの参入・撤退点を決めるには日中チャートを使う。
- 日中トレーディングを試みる前に、日越えのトレーディングを習得せよ。
- 常識化した情報は、無視するように努め、活字情報はあまり真剣には受け取らない。
- 少数派であることを恐れない。マーケットにおいて正しい時は、往々にしてほとんどの人と意見が合わない。(ほとんどの人が負け側)
- テクニカル分析の腕は経験と学習で上達する。常に学習し続けること。
- 単純に考えること。複雑なものが常によいわけではない。