鹿敷長屋

Last-modified: 2015-03-18 (水) 19:42:40

旧データ参照

【概容】

 軍摩貧民街住宅区「鹿敷町」にある裏長屋(我々の世界でいうところのアパート、集合住宅)。
 正確には区域されている長屋全体が鹿敷町であり、鹿敷長屋といってもいい(長屋一棟にひとつの町を割り振るのは決して珍しいわけではない)。

 

 鹿敷長屋自体も、標準的な長屋作りと同じ構造で、店舗向けの表長屋・三軒長屋で囲いをつくり(表長屋)、その囲いの内側に居住向けの棟割長屋・割長長屋・井戸・共用便所・大家宅などが存在する(裏長屋)という形になっている。

 

 そのため、基本的にはどこの長屋町も、裏長屋側に入るために木戸という出入口(マンションでいうところの玄関ロビー)を通る必要があり、この木戸自体は夜間になると施錠される。夜間で裏長屋に入るためには、表通りに面した番小屋(マンションでいうところの管理人室、管理人口)を経由する必要がある。ちなみに本来なら夜間の番小屋を使った裏長屋への出入りは違法だが、番小屋の番太郎と顔馴染みならばほぼ黙認される。
 基本的には棟続きとなっている建物(長屋)を壁で区分し、その区分ごとに大家(正確には家主)が店子に貸すという形式となっている。複数の長屋を借りる店子もいなくはない。

 

 なお、鹿敷長屋独特の独自規則として、居住者(その長屋を借りて、そこで寝泊まりするもの)は女子禁制(理由は後述する)、月一回のどぶ掃除当番交代制(詳細は後述)、番太郎業務志願制(詳細は後述)、淫行禁止(一人での自慰行為は可、理由は後述)という形となっている。

 鹿敷長屋で貸し出している長屋に関しては、以下のとおりである。

【長屋の種類】

  • 棟割長屋(裏長屋、全二十八軒、空きなし)
     一階建て。四畳半一間、一般的な貧乏長屋。小さな土間は玄関でもあり台所も兼ねる。
     壁は薄い。鍵も原則なし。狭い。プライバシーなんてあってないようなもの。そのため、どこの長屋に誰が住んでいるかなどという情報は即座に漏れるし、昨晩はお楽しみでしたね、という情報も筒抜け。
     主に単身者向けだが、貧乏な家族連れなども住む。部屋割りなどは屏風を用いることが多い。
     家賃は一番安く、一週間に三~四日、日雇いで働けば払えないこともない程度。
 

 既出キャラでは、源三、坂嶋竜平、田五朗、陣八がこの形式の長屋を借りている。

 
 
  • 割長長屋(裏長屋、全十ニ軒、空きなし)
     二階建て。間取りは一階が六畳間、二階が四畳かニ畳二間。二階へは梯子で上がる。
     壁は薄いものの棟割長屋ほどではない。鍵も簡単な錠前をつけられるため、私生活上の秘密を守りたい女性のひとり暮らしにも安心。それ以外でもある程度裕福な定職持ち、学者、研究者や妻帯者向けの長屋ともいえる。人気は高い分、家賃は一気に跳ね上がり、比較的安定した定給を有するような経済的余裕がないと難しい。ただし、貧民街とはいえそれでも人気は高い。
 

 既出キャラでは、文聡がこの形式の長屋を借りている。二階が研究所とのこと。

 
  • 表長屋(表長屋、全十一軒、空きなし)
     二階建て。一階入口が四畳半、一回奥で八畳間、ニ階は六畳ニ間。二階へは梯子か階段。
     表通りに面するため、基本的には店舗向けとして貸し出される長屋であり、壁や扉の施錠に関しても、普通の長屋とは異なり本格的。大家の許可さえ取れれば、ある程度の改装も可能。一応、裏口として勝手口もあるものの、夜間そこを出入りするのは禁止されている。
     裕福な町人、或いは店舗経営者向けの物件であり、入居審査は特に厳しく、月々の家賃も割長長屋に比べると更に跳ね上がる。これは建物と土地の賃料だけでなく、店舗運営権(みかじめ料含む)も重なるため。ただし、中流住宅街の長屋に比べると賃料は安いため、店を構えて商売をしたい商売人からすれば人気が高く、空き家が出るとなると、途端に賃貸希望者も殺到するほど。
     現在のところは、損料屋や八百屋、質屋に古着屋、床屋に干物屋、小さな町寺子屋など、数多の店が並んでおり、わざわざ遠出をせずとも生活に必要なものなどは表長屋で大抵揃ってしまうことが殆ど。番小屋もこの表長屋と同じ並びに併設される。
 

 既出キャラでは、牙妻刃兵衛が表長屋で寺子屋を営んでいる。

 
  • 番小屋
     表長屋と同じ間取りで、先述した番太郎(ガードマン)の詰め所とされる場所。
     表通りと長屋に通じる木戸以外に、長屋の中囲い側に入るには、番小屋を通過しなければならない。
     番太郎の役職自体は、鹿敷長屋の場合、居住者の当番交代制。(ただし、当番自体は立候補制であり、番太郎を務めた場合、家賃の割引がある)
     番太郎の仕事は、長屋の木戸の施錠管理と夜間長屋警備、火の番、長屋近辺で犯罪が起きた際の応援など、多岐に渡る。番小屋には犯人の一時的勾留・監視のために簡易な牢獄が設置されており、重犯罪の場合は役人への受け渡しも行う。ただし、厳重注意で済むような程度の場合は基本大家(町内会長)や御用聞きが内々に処理してしまうことも多い。
     真夜中であっても火の番を合法的にかつ独占的に行えるため、その間は焼き芋やおでんの店を兼業的に行うことも多い。そのあたりの裁量は、番太郎に任される。
 
 
  • 三軒長屋(表長屋、全三軒、うち二軒空き)
     基本的には二階建てだが、軍摩では稀に三階建て以上のものも存在する。
     表長屋が三軒並んだ大きさということで三軒長屋と呼ばれるが、実際は三十六畳程度の土地(坪数でいうと十八坪程度)が塀に囲まれ、そこに小さな屋敷があるという賃貸の一戸建てのようなもの。そのため、小さいながらも裏庭が存在する。富裕層向けではあるが、貧民街ではそのあまりの賃料の高さからあまり人気がないため、二軒は空き家と化している。今現在借りられている一軒も、食事処「まるまる亭」として改装されている。
 
  • まるまる亭
     鹿敷長屋の三軒長屋で営まれている食事処。店主(店子)は丸吉さん(豚獣人・36歳)。
     「早い、安い、そこそこうまい」ということで貧民街でもそこそこ人気が高い食事処である。天ぷらが評判の店で、一番の目玉料理は卵の天ぷら。営業時間は午の刻(正午)から戌の刻(夜八時)までとなっているが、そのあたりは店主の気分で前後することもしばしば。この時代では別に珍しくない。
     三階建てで、一階は客席と調理場。二階より上は居住区域となっている。
 
  • 大家宅(裏長屋、一軒のみ)
     大家にして鹿敷町町長、善弼の住まい。
     二階建てであり、表通りではなく内囲いの敷地内に一軒家の形で立てられている。広さは概ね、三軒茶屋と同じくらいの広さながら、裏庭、専用便所、専用井戸、小さいながらも露天風呂完備。ひとり暮らしの家としては広すぎるくらいではあるが、このあたりは町長の特権ともいえる。地主は強い。
     善弼の場合、一階の一部屋を舶来風に仕立てた応接間としており、店子と話をする際は、大抵そこで行われる。主に家賃の支払い以外では入ることがないはずの応接間だが、それ以外の用件で呼ばれることも店子によってはある。そして、店子は大抵何の事情・理由で呼び出されるのか分からないままであることが殆どで、そういうときは決まって厄介事というのが相場で決まっている。
 
 

 ここまでが主な長屋の一覧である。
 ここから下は、長屋敷地には必ず備えられている設備について説明する。

【長屋の設備】

  • 後架(裏長屋)
     共同便所のこと。厠、雪隠とも。
     大家宅と三軒長屋を除いて、個別の便所は各部屋に設けられていない。
     下半分だけを覆う木戸が設けられており、屈んだ状態でも上半身は丸見えなので、誰が入っているかが容易にわかるようになっている。そのため、覗こうと思えばいくらでも覗ける(ただし違法)。
     様式としては汲み取り式であり、排泄物は全て肥料として農家に売却される。また、後架の壁には薬屋などの広告が張られていることが多く、その広告掲載料も大家に入るような仕組みとなっている。
     拭き取り用の紙は本来ならば落とし紙(我々の世界では浅草紙が有名)と呼ばれる紙が使用されるのだが、最近の軍摩では技術革新が起こり、我々の世界でいうところのトイレットペーパーに近い素材の紙が使用されているとのこと。軍摩落紙という名で、名産品となっているとか。
 
 
  • 井戸(ポンプ式)(裏長屋)
     長屋生活における水事情を一手に引き受ける、地下水脈を利用した堀り井戸。昔は、いちいち水を組み上げるのに多大な労力を必要とし、くわえて落下すると命にかかわるような危険性もあったのだが、今では殻繰技術を応用した深井戸用の手押しポンプが設置され、子供でも安心して水を汲めるようになっている。年に一度、ポンプの点検と井戸さらいを行う決まりとなっている。
     なお、夏場は井戸周辺は涼しいので、長屋にすむ皆が集う人気スポットでもある。
 

 なお、貧民街でない場所では、特に飲食店街などでは殻繰ポンプ式井戸が一般的。

 
 
  • 焼却炉(裏長屋)
     番小屋の側に設置されている、ゴミ焼却用の焼却炉。ただし、我々の世界のようにやたらめったらとゴミを出すことはなく、くわえて使用に役所への届けが必要なため(火の取り扱いは厳重に管理されなければいけない都合上)、大掃除の時でもなければ使用されることはない。
     ただし、無断で焼き芋焼いたりすることも可能。勿論、大家にバレればこっぴどく起こられる。
     燃えないゴミに関しては、基本的に再利用可能ならばとことん再利用されるが、そうもできないものに関しては業者を雇って引き取ってもらう他ない。(大抵は埋め立てられる)。なお、ゴミの不法投棄は勿論犯罪である。
 
 
  • どぶ(表・裏長屋ともに存在する)
     生活排水(主に洗濯や料理など)を捨てる用水路の一種。どぶを渡って、川へと流される。
     どぶ板ははめ込んでいるものの、貧乏長屋であるため、割りと外れやすい。ひっかかるとちょっと悲惨な目に遭う。掃除は基本的には一ヶ月に一度、当番制(酷い時は長屋住民総勢で)で行われる。
 
 
  • 祠(裏長屋)
     小さいながらも、鳥居と切妻屋根を備えた小さい祠。
     あまり主流ではなく知名度も小さな山岳神を祀ったものであり、一応、超小規模(人格も有していない規模)ながら神霊が常駐し、長屋全体を霊的守護している。貧民街で祠付きの長屋は極めて珍しい。
     ただし、その影響で裏長屋全体が、そこまで厳格でこそないものの女人禁制となっている(ふたなりは外見が男性に見えるなら可。女性の居住は禁じられているが、表長屋で店を開くことは禁じていない、その場合は別に住居が必要)。また、淫行禁止令もこの祠があるためだとか。本来は自慰行為も禁止だったらしいが、大家が神霊(の本体)に直接嘆願した結果、妥協点としてそれは撤回させた。なお、その禁を破って性行為に及ぶと、祟りによって数ヶ月間ほど性的不能になるらしい。

【長屋生活での注意】

 軍摩住人にとって、長屋の生活はごく一般的でこそあるが、その実態は決して楽なものではない。
 建物が密集しているため、日当たりはよくないし、長屋の建物自体も窓がないために通気性は悪い。それなのに上等な建築物と異なって隙間風は通るものだから、夏は暑くて冬は寒い。何かしらの手段で冷暖房を確保できればいいが、うちわや火鉢ならまだしも、それ以外の冷暖房器具はこぞって高価である。(特に火を取り扱うものに関しては、火事対策のため使用が禁じられているものも多い)。
 生活排水を通るどぶに関しても、近代水道事情と異なり衛生管理面での機能が徹底されていないため、時には汚臭がすることもある。無論、鹿敷長屋でそうなった場合は、きちんと清掃活動もするが、貧民街と相当される地域で、鹿敷長屋以外の場所では、それらの管理すらしていないところもある。

 

 
 なあに、とりあえず家なんて寝るところでしかないんだから、布団があれば大丈夫?
 ――――残念ながら、布団ですらそもそも高級品である。
 貧民街では敷布団などないのが当たり前。なけなしの金で安物の敷布団を買って、その間にく包まって寝るのが主流だ。それすらも買えないのなら、それこそ丹前や褞袍(どてら)といった分厚い衣類を布団代わりにすることさえある。狗津原三楼がどれだけ恵まれた住環境かがよく分かる。

 

 食事情に関しては、まだマシだろう。軍摩はそもそも食文化に関しては恵まれている土地柄で、加えて年貢米流通の要衝地と呼ばれるくらいである。そこそこ頑張って働いていれば、三食白いご飯を食べることも出来るし、外食するだけの金も自炊する腕もない男やもめでも、適当な煮売屋で惣菜だけ買っておいて、あとは白米だけ炊いておけば食に困ることはない。外食するなら選択肢はそれこそよりどりみどりで、近場なら天麩羅が美味しい「まるまる亭」もあるし、屋台でそばや寿司をいただくこともできる。ちょっと遠出をすれば、ぴっつぁで有名な「十六夜月亭」やなんかも選択肢にあがるだろう。

 

 便所は共用ではあるが後架があるので問題ないといえるが、風呂に関しては長屋には存在しないため、湯屋(銭湯)に通う必要がある。え、大家は貸してくれないのかって?貸さないよ?
 銭湯代自体は決して払えない価格でこそないものの(おおむね蕎麦一杯分より少し安いくらい)、毎日銭湯通いをするのは貧民街住人としては贅沢なこと極まりないのは確かである。

 

 と、長屋での生活は色々と大変であるが、悪いことばかりとも限らない。
 少なくとも、同じ長屋に住む店子同士で、なにか困ったことがあったら助けあうのは普通であるし、そこから生まれる連帯感やら家族の情に似た何かが芽生えるのも事実である。長屋というのは、いってしまえば、そういった互助共同体の一種なわけだ。