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Last-modified: 2015-10-16 (金) 16:26:09
 

はたななのはこ『大正・二十七の匣篇』Introduction.

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大正五年。
空前の好景気に沸く日本国―、その帝都たる東京。

 

内海、今は東京湾と呼ばれる内湾から十四海里ほど離れた孤島、小絹島に土塊とも鉄とも取れぬ材質の巨大な立方体が現れる。
その立方体は、三段三列の四角形が並び、六面で構成され(六面体である推測は五面が地上に露出しているからであり、地面に接した六面目を確認したわけではない)、匣を二十七組み上げた様な形をしていた。

 

発見したのは近海で漁を営む漁師たち。
彼らの通告により、帝国陸軍の調査が入る事になる。
その折に、この立方体には四ヶ所に扉が設けられていて、それらが正確に東西南北を向いている事が確認される。
調査をするために「中」へ侵入した者は十八名。

 

内、生還した者は三名だった。

 

調査員は錯乱状態にあり、匣の中についての情報は真偽見極められず。
それぞれが口にしていた内容の共通項は、匣の中には凶暴な動物が潜む事、そして、数多の殺傷力を持つ仕掛があった事。
更に加えるならば、彼らの「この世の終わりの始まりを見た」という言葉…。
その後、彼らは陸軍病院にて不可解な死を遂げる。

 

陸軍省での会議の結果、帝国陸軍主導での調査を中止し、人海戦術を用いた作戦に切り替えた。
それは即ち、匣の中、その再深部まで到達し帰還した者に賞金を与えるというもの。

 

「!!也圓萬百金二者勇シケ開ヲ匣!島絹小エ集」

 

斯くして、全国から小絹島に集まる猛者たち。
其々の思いを胸に、二十七の匣(はたななのはこ)に彼らは飲まれていく

 
 

はたななのはこ『昭和・東京外殻篇』Introduction.

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二十七の匣消失より二十四年―、人々から匣の記憶は徐々に薄れていた。
大戦の火種がちりちりと燻る昭和十五年。
欧米諸国は世界恐慌を発端とする大不況の渦中に沈み、それはまだ尾を引いていた。
だが、大日本帝国は大正末期に施行された大東亜共栄圏構想による内国輸出に関する政策が功を奏して、東アジア圏はその難を逃れ、日本は事実上その盟主であった。

 

そして、有色人種国家初のオリンピック開催を控え、帝都東京はこれまでにない活況を迎える。
それが、「歪んだ歴史」である事を知っている者はいるはずもなかった。

 

昭和十五年、夏。それは突然の出来事であった。
帝都東京を中心としてマグニチュード10.5巨大地震が襲う。
幸いにも震源は深く、建物の倒壊や死傷者は極めて少数であったが、それは信じられないものを東京に在る人々にもたらした…。

 

"東京外殻"―

 

土塊とも鉄とも取れぬ材質の巨大な壁が、東京全域を覆う。そして、突如として現れた、異形の生物群奇妙な構造物
殺戮と破壊。大混乱に陥る帝都東京。

 

しかし、そんな阿鼻叫喚の地獄で冷静さを失わず、希望を見失わない者も居た。
それはかつて、「二十七の匣」に挑み、生還した者たち。

 

彼らに導かれ、決死東京脱出作戦が始まる。

 

―これは、『世界の終わりの始まり』なのか。

 
 

はたななのはこ『アメリカ・群青の奈落篇』Introduction.

 

西暦1941年、1月。
東京外殻隆起から数ヵ月、人類史上未曾有災害への動揺は世界中に広まっていた。

 

事実上、首都を失った大日本帝国は臨時的にその首都機能を京都府に移し、外殻内に取り残されているであろう人々の救助活動を行うも、「竜」の存在により難航していた。
同年同月、臨時国連総会にてアメリカ合衆国より発表が行われる。
それは大日本帝国領土小絹島における二十七の匣事件に端を発した数々の現象、「匣」の存在の公式発表だった。
人智を越えた現象に各国首脳陣が驚きを隠せない中、アメリカ代表が宣言する。

 

匣災害、またそれらが関わる異常地殻変動は、人類全体の繁栄を脅かす脅威であり、国家はその国境を越えて手を取り、共に戦わねばならぬ時代が来たのだ!」

 

その言葉に迎合するもの、背を向けるもの、煮え湯を飲まされたと憤るもの。
様々な思惑が渦巻く中で、世論が選ぶ美しい欺瞞は、実を結ぶ。

 

西暦1941年、4月。
匣関連及び未確認または未詳災害対策における国家間の協調的行動や活動に関する基本条約案、通称:パンドラ協定が可決され、加盟国58ヶ国のうち54ヶ国が同意し、同意を示さなかった4ヶ国は連盟を脱退をして国際議論の場から去った。

 

そして、西暦1942年、10月。アメリカ合衆国領土カリフォルニア州ロサンゼルス市上空に不可解現象が起きる。

 

誰もまだ気づいてはいない。
ちていく、けない。

 

それは、群青の奈落―。