【ドニの領主】

Last-modified: 2022-06-29 (水) 01:33:36

DQ8

【ククール】とその異母兄【マルチェロ】の亡父。
しかし劇中で本名さえ出ておらず、肖像画や遺影もないので容姿も不明と、はっきりしない点の多い男。わかっているのはとんでもないロクデナシだったことくらい。
 
その領地の規模についても、【マイエラ地方】のかなり広範な地域だったのか、【ドニの町】だけに止まっていたのか、明確ではない。
いずれにせよドニの支配者だったことは間違いないので、ここでは「ドニの領主」と称する。

人物

海を隔てた国のトロデーンにも名が届く程の家柄だったが、その国王【トロデ】から「ごうつくばりで女好き、ばくちで身を持ち崩した」という悪評が飛び出す程の男。
 
欲深いだけで金儲けの才能はなかったのか、遊蕩三昧の借金で屋敷を失い、死亡後は嫡男のククールが存命なのに家名が断絶するという異常事態となっている。家名は金銭的に落ちぶれようが一応残るのが普通で、その断絶は傍系を含む一族が全滅するか、より上の権力者から取り潰しの罰を受けでもしない限り起こらないものなのだが……
 
領民やトロデの発言から死因は流行り病と判るのだが、その死に際に関しても、看病していた妻まで病に巻き込み、領主夫妻が若くして共倒れという救いのないもの。
ククールが仲間会話で「住んでた家も残ってない」と発言している通り、現在のマイエラ地方にその屋敷らしきものは見当たらない。ドニの町は岩場に囲まれている上に半分近くが酒場の狭い土地なので、あの中に他に屋敷があったとは考えにくい。【ゴレムス】がいる遺跡辺りにあったのかもしれない。
 
当然だが領民の人望などは皆無で非常に嫌われていた。支配下にあったドニの町の住人からは「ダメ領主」「死んだ時は町のみんなが喜んだ」と死後10年以上経っている現在ですら散々に言われている有様。
ドニの町はこの領主が生きていた頃の方が栄えていたのに「性格は悪いが仕事だけはできた」といった話も聞こえて来ないのを見ると、当時の繁栄は彼の手腕がもたらした訳でもなかったらしい。
町の維持に責任を持つ立場でありながら資産を管理できず賭け事に現を抜かした挙げ句の没落に、マルチェロの母の件まで知られていれば論を俟たないが、「女好き」という噂がトロデの耳にまで入るあたり、言及がないだけで他にも女性がらみの放蕩や横暴も相当酷かったのかもしれない。
しかし悪評が聞こえるのは彼のみで、奥方の悪評を聞くことはなく、今の住民たちは息子のククールに対しても友好的。こいつ一人だけがとことんやりたい放題していたようだ。
 
妻との間に子供ができないからと跡継ぎ目当てにメイドに手を出してマルチェロを生ませておきながら、正妻がククールを産むとマルチェロ母子を追い出し援助もしないなど、悪徳権力者にありがちな自分勝手で冷たい人柄を伺わせる。
追い出されたメイドは心労で病死してマルチェロは孤児となり、嫡男ククールもまた、両親を失い残された多額の借金によって路頭に迷ってしまった。
二人は【オディロ】が孤児の受け入れを行っていた【マイエラ修道院】で因縁の再会を果たし、複雑な感情を持って【聖堂騎士団】として生きていくことになる。
 
そのため、あの不仲極まりないマルチェロ・ククール兄弟ですら、父への最低評価は完全に一致している。
勝手な都合で生まされた挙げ句に母ともども捨てられたマルチェロは人生を滅茶苦茶にした仇としか見ておらず、【法皇就任演説】で徹底的に否定材料として扱っており、遊蕩ぶりを見せられた上に多額の借金を置き土産に死別という形で幼くして路頭に迷わせられた挙句、腹違いの兄から父の分の憎悪まで向けられる羽目になったククールも「好き勝手やって死んだ」「クソ親父」と評した。
息子二人の人生を大きく狂わせ、回復不能な亀裂を生じさせたのだから無理からぬ事。最低の父親だったことは疑う余地もない。
 
トンビが鷹を生んだとでも言おうか、息子2人はどちらも非常に有能であった。この領主の方が一族で特出した不出来のバグだったのかもしれないが。
…と言いつつ、「ごうつくばり」がマルチェロに、「女好き」と「賭博好き」がククールにと、悪い部分も確かにそれぞれ受け継がれてしまっている。
そんな2人もマイエラ修道院でオディロに育てられたお陰で、なんとか人の道を踏み外さずに済んでいたのだが…(マルチェロはオディロの死後人の道を踏み外し【法皇】殺害にまで至ってしまった)。
また、2人とも容姿端麗である事から顔だけは良かったのかもしれない。ただ、2人の顔はあまり似ていないのでどちらが父親似なのか、或いは両方母親似なのかは不明。
 
善意や熱意や望むもののすれ違いが大きな悲劇や事件に繋がる事もあるドラクエシリーズだが、こいつはまったく身勝手な動機や経緯で多くの人生を狂わせる起点になっており、あらゆる点で一切の美点が無い、ある意味すごいキャラクターである。

ぶっちゃけチャゴスやハワードの方がまだマシに思えるレベルである。

3DS版

マルチェロとその母親に関する設定が「跡継ぎ目当てでメイドに子供を産ませたが、正妻に息子が生まれたのでメイド母子を捨てた」から、下記の様に変更されたのだが…

  • 「平民の恋人がいて子供(マルチェロ)を妊娠していたが、貴族の娘との縁談が成立したことで子供ごと捨てた。そのショックで元恋人は死亡」
  • 「妻との間に子供が生まれなかったため昔の恋人との間に生まれた子供を養子に迎え入れようとしたが、妻が子供(ククール)を妊娠したためその養子縁組を破談にした」

正妻への不義という形でなくなった代わりに、恋人とその間の子供を美味しい縁談に乗り換えるために捨てて、やはり援助も何もない。しかも都合が良い時だけ息子として呼び寄せるが都合が悪くなるとまた捨てるという、なおさら冷酷非道な話になってしまっている。

余談

オリジナル版のエピソードは旧約聖書によく似た話がある。
その内容は

アブラハムとサラという夫婦がいたが、サラには子供ができなかったので、アブラハムは奴隷のハガルに手を出して息子のイシマエルを産ませた。だが後にサラが嫡男のイサクを産んだことでイシマエルは棄てられた

というもの。
父の身勝手で生まれた上に嫡男が生まれたら邪魔だからと追い出された境遇は、リメイク前のマルチェロそのままである。
もっともイシマエルは彼こそ正当な相続人だと主張されるのに対して、マルチェロは捨てられたまま、相続するような家系も財産もなくしてしまったが…。 
このため、リメイクの改編は教会のシンボルマークのように「宗教がらみで余計な憶測を呼ばないよう変えたのでは」などと推測されることも。
これについて公式からのコメントはないものの、宗教絡みは非常にデリケートなものであり、ましてグローバル化の進んだ昨今では下手なことは言えないだろう。コイツが最低男として描かれるにあたってたまたま類似したものになっただけという可能性だって否定できないのだ。