Aパート
加持:葛城、俺だ。多分この話を聞いている時は、君に多大な迷惑をかけた後だと思う。すまない。リッちゃんにもすまないと謝っておいてくれ。
加持:後、迷惑ついでに俺の育てていた花がある。俺の代わりに水をやっといてくれると嬉しい。場所はシンジ君が知ってる。
加持:葛城、真実は君とともにある。迷わず進んでくれ。もし、もう一度会える事があったら、8年前に言えなかった言葉を言うよ。じゃ。
ミサト:鳴らない、電話、か…
シンジ:(ミサトさん、今日も篭りっぱなしだ。)
シンジ:(アスカ、今日も戻らないつもりかな…)
ヒカリ:(学校にも行かず、家にも帰らず、ずっとゲームばっかり…)
アスカ:ヒカリ…
ヒカリ:ん、何?
アスカ:寝よっか?
アスカ:…ごめんね、私、邪魔かな?
ヒカリ:そんな事ないわよ。
アスカ:私、勝てなかったんだ、EVAで。もう私の価値なんてなくなったの。どこにも。
アスカ:嫌い…大っ嫌い…みんな嫌いなの。でも一番嫌いなのは私。何かもう、どうでも良くなっちゃったわ。
ヒカリ:…私は、アスカがどうしたっていいと思うし、何も言わないわ。アスカはよくやったと思うもの…
リツコ:そう、いなくなったの、あの子。
リツコ:ええ、多分ね。ネコにだって寿命はあるわよ、もう泣かないで、おばあちゃん。
リツコ:うん、時間ができたら一度帰るわ。母さんの墓前にももう三年も立ってないし。
リツコ:今度私から電話するから。じゃ、切るわよ。
リツコ:…そう、あの子が死んだの…
SEELE:ロンギヌスの槍、回収はわれらの手では不可能だよ。
SEELE:なぜ使用した。
SEELE:EVAシリーズ。まだ予定には揃っていないのだぞ。
ゲンドウ:使徒殲滅を優先させました。やむを得ない事情です。
SEELE:やむを得ないか。言い訳にはもっと説得力を持たせたまえ。
SEELE:最近の君の行動には、目に余るものがあるな。
ゲンドウ:冬月、審議中だぞ!
ゲンドウ:…分かった。
ゲンドウ:使徒が現在接近中です。続きはまた後ほど。
SEELE:その時君の席が残っていたらな。
キール:碇、SEELEを裏切る気か?
BGM:2-12
ミサト:後15分でそっちに着くわ。零号機を32番から地上に射出、弐号機はバックアップに廻して。
ミサト:そう、初号機は碇司令の指示に。私の権限じゃ凍結解除はできないわよ。じゃぁ。
ミサト:使徒を肉眼で確認…か…
オペレータ:零号機発進、迎撃位置へ!
マコト:弐号機は現在位置で待機を!
ゲンドウ:いや、発進だ。
マコト:司令!
ゲンドウ:構わん、囮くらいには役に立つ。
マコト:はい…
オペレータ:EVA弐号機、発進準備!
アスカ:(のこのことまたこれに乗ってる…未練たらしいったらありゃしない…)
マヤ:弐号機、第8ゲートへ。出現位置決定次第、発進せよ。
アスカ:(ふん、私が出たって足手まといなだけじゃないの?)
シゲル:目標接近、強羅絶対防衛線を通過。
アスカ:(どうでもいいわよ、もう…)
シゲル:目標は、大涌谷上空にて滞空。定点回転を続けています。
マコト:目標のA.T.フィールドは依然健在。
リツコ:何やってたの?
ミサト:言い訳はしないわ、状況は!?
シゲル:膠着状態が続いています。
マコト:パターン青からオレンジへ、周期的に変化しています!
ミサト:どういう事?
マヤ:MAGIは回答不能を提示しています!
シゲル:答えを導くには、データ不足ですね。
リツコ:ただあの形が固定形態でない事は確かだわ。
ミサト:先に手は出せないか…
BGM停止
ミサト:レイ、しばらく様子を見るわよ。
レイ:いえ、来るわ!
ミサト:レイ、応戦して!
マコト:だめです、間に合いません!
BGM:1-3
シゲル:目標、零号機と物理的接触!
ミサト:零号機のA.T.フィールドは?
マヤ:展開中、しかし、使徒に侵蝕されています!
リツコ:使徒が積極的に一次的接触を試みているの?零号機と!
マヤ:危険です!零号機の生体部品が侵されて行きます!
ミサト:EVA弐号機、発進、レイの救出と援護をさせて!
マヤ:目標、さらに侵蝕!
リツコ:危険ね、すでに5%以上が生体融合されているわ。
ミサト:アスカ、後300接近したらA.T.フィールド最大で、パレットガンを目標後部に撃ち込んで!いいわね?
ミサト:EVA弐号機、リフトオフ!
ミサト:出撃よ、アスカ、どうしたの?弐号機は?
マヤ:だめです、シンクロ率が二桁を切ってます!
ミサト:アスカ!
アスカ:動かない…動かないのよ…
ミサト:このままじゃ餌食にされるわ。戻して、早く!
BGM停止
BGM:3-10
レイ:誰?
レイ:私。EVAの中の私。
レイ:いいえ、私以外の誰かを感じる。
レイ:あなた誰?使徒?私たちが使徒と呼んでいる人?
使徒:私と一つにならない?
レイ:いいえ、私は私、あなたじゃないわ。
使徒:そう。でもだめ、もう遅いわ。
使徒:私の心をあなたにも分けてあげる。この気持ち、あなたにも分けてあげる。
使徒:痛いでしょう?ほら、心が痛いでしょう?
レイ:痛い…いえ、違うわ…サビシイ…そう、寂しいのね…
使徒:サビシイ?分からないわ。
レイ:一人が嫌なんでしょ?
レイ:私たちはたくさんいるのに、一人でいるのが嫌なんでしょ?
レイ:それを、寂しい、というの。
使徒:それはあなたの心よ。悲しみに満ち満ちている。あなた自身の心よ。
レイ:はっ…これが…涙…?泣いているのは、私?
ミサト:レイっ!
BGM:2-17
ゲンドウ:初号機の凍結を現時刻をもって解除、直ちに出撃させろ。
ミサト:え…
ゲンドウ:出撃だ。
ミサト:…はい。
アスカ:何よ、私の時は出さなかったくせに…
ミサト:A.T.フィールド展開、レイの救出急いで!
シンジ:はい!
レイ:碇君!
シンジ:はっ!
レイ:これは私の心…碇君と一緒になりたい…?
レイ:だめ!
マヤ:A.T.フィールド反転、一気に侵蝕されます!
リツコ:使徒を押え込むつもり!?
ミサト:レイ、機体は捨てて、逃げて!
レイ:だめ、私がいなくなったらA.T.フィールドが消えてしまう。だから、だめ…
ミサト:レイ、死ぬ気?
マヤ:コアが潰れます、臨界突破!
レイ:!
BGM停止
シンジ:…
シゲル:目標、消失…
ミサト:現時刻をもって作戦を終了します。第一種警戒態勢へ移行。
マコト:了解、状況イエローへ、速やかに移行。
ミサト:零号機は!?
マヤ:エントリープラグの射出は、確認されていません…
ミサト:生存者の救出、急いで…
リツコ:もしいたら、の話ね…
ミサト:!
リツコ:……
Bパート
男:赤木博士…
男:レベルCの…は、南西方向に広がっています。
リツコ:この事は極秘とします。プラグは回収、関係部品は処分して。
男:了解。
男:作業、急げ!
SEELE:ついに第16の使徒までを倒した。
SEELE:これで、SEELEの死海文書に記載されている使徒は、後一つ。
キール:約束の時は近い。その道のりは長く、犠牲も大きかったな。
SEELE:左様。ロンギヌスの槍に続き、EVA零号機の損失。
SEELE:碇の解任には十分すぎる理由だな。
SEELE:冬月を無事に返した意味の分からない男でもあるまい。
SEELE:新たな人柱が必要ですな、碇に対する。
キール:そして事実を知るものが必要だ。
リツコ:…
ミサト:シンジ君、開けるわよ。
シンジ:ミサトさん…出ないんだ、涙。悲しいと思ってるのに、出ないんだよ。涙が。
ミサト:シンジ君…今の私にできるのは、このくらいしかないわ…
シンジ:やめてよ!やめてよ、ミサトさん!
ミサト:ごめんなさい…
ミサト:(さみしいはずなのに、女が恐いのかしら…いえ、人との触れ合いが、恐いのね…)
ミサト:ペンペン、おいで…
ペンペン:…
ミサト:(そっか、誰でもいいんだ…さみしかったのは私の方ね…)
ミサト:はい…もしもし………なんですって!?
ミサト:シンジ君!
アナウンス:第一内科のウガイ先生、ウガイ先生、至急、第二会議室へご連絡ください。
シンジ:綾波!
レイ:…
シンジ:良かった、綾波が無事で…
レイ:…
シンジ:あの、父さんは来てないんだ…
レイ:…
シンジ:ありがとう、助けてくれて。
レイ:何が?
シンジ:何がって、零号機を捨ててまで助けてくれたんじゃないか、綾波が。
レイ:そう、あなたを助けたの…
シンジ:うん…覚えてないの?
レイ:いいえ、知らないの。
レイ:多分私は三人目だと思うから。
レイ:…
レイ:これが涙?初めて見たはずなのに、初めてじゃないような気がする。私、泣いてるの?…なぜ、泣いてるの?
ゲンドウ:そうだ、ファーストチルドレンは現状維持だ。新たな拘束の必要はない。セカンド、サードに関しても同様だ。監視だけでいい。
冬月:しかし、レイが生きていると分かれば、キール議長らがうるさいぞ。
ゲンドウ:SEELEの老人たちには別の物を差し出してある。心配ない。
キール:われわれも穏便に事は進めたい。君にこれ以上の陵辱、辛い思いはさせたくないのだ。
リツコ:私は何の屈辱も感じていませんが。
SEELE:気の強い女性だ。碇がそばに置きたがるのも分かる。
SEELE:だが、君をわれわれに差し出したのは、他でもない、碇君だよ。
キール:零号機パイロットの尋問を拒否、代理人として君を寄越したのだよ。赤木博士。
リツコ:(レイの代わり…私が…)
加持:君がほしがっていた真実の一部だ。
加持:他に36の手段を講じて君に送っているが、おそらく届かないだろう。
加持:確実なのはこのカプセルだけだ。
加持:こいつは俺の全てだ。君の好きにしてくれ。
加持:パスコードは俺たちの最初の思い出だ。
加持:じゃ、元気でな。
ミサト:鳴らない電話を気にしてイラつくのは、もうやめるわ。
ミサト:あなたの心、受け取ったもの。
SEELE:良いのか?赤木博士の処置。
SEELE:冬月とは違う。彼女は返した方が得策だ。
SEELE:EVAシリーズの功労者、いま少し役に立ってもらうか。
SEELE:さよう、われわれ人類の未来のために。
ゼーレ:エヴァンゲリオン、すでに八体まで用意されつつある。
ゼーレ:残るは後四体か。
キール:第3新東京市の消滅は、計画を進める良き材料になる。
キール:完成を急がせろ。
キール:約束の時は、その日となる。
シンジ:はい、もしもし?
リツコ:そのまま聞いて。あなたのガードを解いたわ。今なら外に出られるわよ。
シンジ:リツコさん…
リツコ:…?…!
ミサト:無駄よ。私のパスがないとね。
リツコ:そう、加持君の仕業ね。
ミサト:ここの秘密、この目で見せてもらうわよ。
リツコ:いいわ。ただしこの子も一緒にね。
シンジ:…
ミサト:…いいわ。
シンジ:…まるで綾波の部屋だ…
リツコ:綾波レイの部屋よ。彼女の生まれ育ったところ。
シンジ:ここが?
リツコ:そう、生まれたところよ。
リツコ:レイの深層心理を構成する光と水は、ここのイメージが強く残っているのね。
ミサト:赤木博士、私はこれを見に来たわけじゃないのよ。
リツコ:分かっているわ、ミサト…
シンジ:EVA?
リツコ:最初のね。失敗作よ。10年前に破棄されたわ。
シンジ:EVAの墓場…
リツコ:ただのゴミ捨て場よ。
リツコ:あなたのお母さんが消えたところでもあるわ。
リツコ:覚えてないかもしれないけど、あなたも見ていたはずなのよ。お母さんが消える瞬間を。
シンジ:…
ミサト:リツコ!
リツコ:…
ミサト:これが、ダミープラグの元だというの?
リツコ:…真実を見せてあげるわ。
BGM:2-17
シンジ:綾波…レイ…?
シンジ:!!!
ミサト:まさか、EVAのダミープラグは!
リツコ:そう、ダミーシステムのコアとなるもの。その生産工場よ。
ミサト:これが!?
リツコ:ここにあるのはダミー。そしてレイのためのただのパーツに過ぎないわ。
リツコ:人は神様を拾ったので喜んで手に入れようとした。だから罰が当たった。それが15年前。
リツコ:せっかく拾った神様も消えてしまったわ。
リツコ:でも今度は神様を自分たちで復活させようとしたの。それがアダム。
リツコ:そしてアダムから神様に似せて人間を作った。それがEVA。
シンジ:ヒト…人間なんですか!?
リツコ:そう、人間なのよ。本来魂のないEVAには、人の魂が宿らせてあるもの。
リツコ:みんな、サルベージされたものなの。
リツコ:魂の入った入れ物はレイ、一人だけなの。あの子にしか魂は生まれなかったのよ。ガフの部屋は空っぽになっていたのよ。
リツコ:ここに並ぶレイと同じ物には魂がない。ただの入れ物なの。
リツコ:だから壊すの。憎いから。
レイたち:ウフフフフ…
ミサト:あんた、何やってるか、分かってんの!?
リツコ:ええ、分かっているわ。破壊よ。人じゃないもの。人の形をしたものだもの。
リツコ:でもそんなものにすら私は負けた。勝てなかったのよ。
リツコ:あの人の事を考えるだけで、どんな、どんな陵辱にだって耐えられたわ!私の体なんてどうでもいいのよ!
リツコ:でも、でもあの人は、あの人は…分かっていたのに…
リツコ:バカなのよ、私は!親子揃って大バカ者だわ!
リツコ:…私を殺したいのならそうして…いえ、そうしてくれると嬉しい…
ミサト:それこそバカよ、あなたは…
シンジ:…
ミサト:EVAに取り憑かれた人の悲劇……私も…同じか…
BGM停止