第拾七話 四人目の適格者/EPISODE17:FOURTH CHILDREN

Last-modified: 2020-07-13 (月) 16:28:54

Aパート

キール:今回の事件の唯一の当事者である初号機パイロットの直接尋問を拒否したそうだな、葛城三佐。

ミサト:はい。彼の情緒は大変不安定です。今ここに立つことが良策とは思えません。

委員:では聞こう、代理人葛城三佐。

委員:先の事件、使徒がわれわれ人類にコンタクトを試みたのではないのかね?

ミサト:被験者の報告からはそれを感じ取れません。イレギュラーな事件だと、推定されます。

委員:彼の記憶が正しいとすればな。

ミサト:記憶の外的操作は認められませんが。

委員:EVAのACレコーダーは作動していなかった。確認はとれまい。

委員:使徒は人間の精神、心に興味を持ったのかね?

ミサト:その返答はできかねます。果たして使徒に、心の概念があるのか、人間の思考が理解できるのか、まったく不明ですから。

委員:今回の事件には、使徒がEVAを取り込もうとしたという新たな要素がある。これが予測されうる第13使徒以降とリンクする可能性は?

ミサト:これまでのパターンから、使徒同士の組織的なつながりは否定されます。

委員:さよう。単独行動であることは明らかだ。これまではな。

ミサト:それは、どういうことなのでしょうか?

キール:君の質問は許されない。

ミサト:はい。

キール:以上だ。下がりたまえ。

ミサト:はい。

キール:どう思うかね、碇君?

ゲンドウ:使徒は知恵を身につけ始めています。残された時間は、

キール:後わずか、と言うことか。


看護婦:12号室のクランケ?

看護婦:例のE事件の救急でしょ?ここに入院してからずいぶん経つわね。

看護婦:なかなか難しいみたいよ、あの怪我。

看護婦:まだ小学生なのに。

看護婦:今日もきてるんでしょ、あの子。

看護婦:そうそう。週2回は必ず顔出してるのよ、妹思いのいいお兄さんよねぇ。

看護婦:ほんと、今時珍しいわね、あんな男の子。


ゲンドウ:レイ、今日はいいのか?

レイ:はい。明日、赤木博士のところへ行きます。明後日は学校へ。

ゲンドウ:学校はどうだ?

レイ:問題ありません。

ゲンドウ:そうか、ならばいい。


ヒカリ:起立、礼、着席!

老教師:あ、ああ…今日の休みはいつもの綾波と、相田か。後、今日は小池先生がお休みで、4時限目の現国が自習となります。*****

シンジ:ケンスケ、どうしたの?

トウジ:新横須賀。今日も軍艦の追っかけや。みょうこうとかいうんが入港しとるんやと。

老教師:鈴原!

トウジ:は、はい!

老教師:後で、綾波にプリントを届けておくように。

トウジ:はい!


マコト:とにかく、第1支部の状況は、無事なんだな!?いいんだよ!計算式やデータ誤差はMAGIに判断させる!


冬月:消滅!?確かに、第2支部が消滅したんだな?

シゲル:はい、すべて確認しました。消滅です。


ミサト:まいったわねー。

マコト:上の管理部や調査部は大騒ぎ、総務部はパニクってましたよ!

ミサト:で、原因は?

リツコ:未だ分からず。手がかりはこの静止衛星からの映像だけで、後は何も残ってないのよ。

マヤ:10-、8、7、6、5、4、3、2、1、コンタクト。

ミサト:ひどいわね。

マヤ:エヴァンゲリオン4号機ならびに半径89キロ以内の関連研究施設はすべて消滅しました。

リツコ:数千の人間を道連れにね。

シゲル:タイムスケジュールから推測して、ドイツで修復したS2機関の搭載実験中の事故と思われます。

マヤ:予想される原因は、材質の強度不足から設計初期段階のミスまで、32768通りです。

ミサト:妨害工作の線もあるわね。

マコト:でも爆発でなく消滅なんでしょう?つまり、消えた、と。

リツコ:多分、ディラックの海に飲み込まれたんでしょうね、先の初号機みたく。

ミサト:じゃあせっかく直したS2機関も?

リツコ:パーよ。夢は潰えたわね。

ミサト:訳の分からないものを無理して使うからよ。

リツコ:(…それはEVAも同じだわ)


ミサト:で、残った3号機はどうするの?

リツコ:ここで引き取ることになったわ。米国政府も第1支部までは失いたくないみたいね。

ミサト:3号機と4号機はあっちが建造権を主張して強引に作っていたんじゃない!いまさら危ないところだけうちに押し付けるなんて、虫のいい話ね。

リツコ:あの惨劇の後じゃ誰だって弱気になるわよ。

ミサト:で、起動試験はどうするの?例のダミーを使うのかしら?

リツコ:…これから決めるわ。


リツコ:試作されたダミープラグです。レイのパーソナルが移植されています。

リツコ:ただ、人の心、魂のデジタル化はできません。あくまでフェイク、擬似的なものです。

リツコ:パイロットの思考の真似をする、ただの機械です。

ゲンドウ:信号パターンをEVAに送り込む。EVAがそこにパイロットがいると思い込み、シンクロさえすればいい。

ゲンドウ:初号機と弐号機にはデータを入れておけ。

リツコ:まだ問題が残っていますが。

ゲンドウ:構わん。EVAが動けばいい。

リツコ:はい。


ゲンドウ:機体の運搬はUNに一任してある。週末には届くだろう。

ゲンドウ:後は君のほうでやってくれ。

リツコ:はい。調整ならびに起動試験は、松代で行います。

ゲンドウ:テストパイロットは?

リツコ:ダミープラグはまだ危険です。現候補者の中から、

ゲンドウ:4人目を選ぶか。

リツコ:はい。一人、速やかにコアの準備が可能な子供がいます。

ゲンドウ:任せる。

リツコ:はい。

ゲンドウ:レイ、上がっていいぞ。

レイ:はい。

ゲンドウ:食事にしよう。

レイ:はい。

リツコ:


ヒカリ:起立!礼!

トウジ:さ~って、メシやメシ、学校最大の楽しみやからなぁ!

アスカ:え~~~~~~っ、お弁当、持ってきてないの!?

シンジ:き、昨日は宿題で作る暇なかったんだよ。

アスカ:だからって、この私にお昼無しで過ごせってえの?あんたは!

トウジ:なんや、また夫婦喧嘩かいな!

クラスメイト:ワハハハハ!

シンジ:…違うよっ!

アスカ:…違うわよ!


ミサト:何よ改まって。

リツコ:松代での3号機の起動実験、テストパイロットは4人目を使うわよ。

ミサト:4人目?フォースチルドレンが見つかったの?

リツコ:昨日ね。

ミサト:マルドゥック機関からの報告は受けてないわよ。

リツコ:正式な書類は明日届くわ。

ミサト:赤木博士。また私に隠し事してない?

リツコ:別に。

ミサト:まあいいわ、で、その選ばれた子って誰?

ミサト:えっ、寄りにもよって、この子なの?

リツコ:仕方ないわよ、候補者を集めて保護してあるのだから。

ミサト:話づらいわね、このこと。

ミサト:アスカはいいのよ、EVAに乗ることにプライド賭けてるから。レイは例外としてもね。

ミサト:いい事ないもの、私たちとEVAに関わったって。それを一番よく知っているのがシンジ君だものね。

ミサト:これ以上辛い思いは、させたくないわ。

リツコ:でも、私たちにはそういう子供たちが必要なのよ、みんなで生き残るためにはね。

ミサト:奇麗事はやめろ、と言うの?


男子:じゃぁな~

ヒカリ:鈴原、今日から週番なんだから、ちゃんとやりなさいよ。

トウジ:何の事や?

ヒカリ:プリント!届けてくれって先生が言ったでしょう!

トウジ:なんやイインチョ、相方がおるやろう。

ヒカリ:綾波さんは今日休み!

トウジ:綾波とワシなんか。そりゃしゃーないなぁ。

トウジ:でも、女の家に一人じゃ行けへんしなぁ。

ヒカリ:それなら私が一緒に…

トウジ:シンジ!帰り頼むわ。

ヒカリ:


シンジ:綾波、入るよ。

トウジ:女の部屋に黙って入るんは良うないと思うで。

シンジ:しょうがないよ、ここに入れても見ないだけだし。

シンジ:お邪魔するよ。

トウジ:なんや、これが女の部屋かいな!無愛想やなぁ。

トウジ:なんや、かってにいじって、叱られるで。

シンジ:片づけてるだけだよ。

トウジ:ワシは手伝わんで!男のする事やない!

シンジ:うん…でもミサトさんに嫌われるよ、そういうの。

トウジ:かまへん!ワシの信念やからなぁ!

トウジ:ほんま、変わったなぁ。

シンジ:何が?

トウジ:シンジや。

シンジ:え?

トウジ:初めて会うたときは、正直いけ好かんやっちゃと思うとったけど、人のために何かやる奴とも思えんかったし。

トウジ:ま、要するに余裕なんやろなぁ、そないなことは。

トウジ:お邪魔しとるで。

レイ:何?

トウジ:あれが溜まってたプリントや。

レイ:…?

シンジ:ごめん、かってに片づけたよ、ごみ以外は触ってない。

レイ:あ、ありがとう…


トウジ:ほんま、EVAのパイロットって変わりもんばっかりやなぁ。


レイ:ありがとう…感謝の言葉、初めての言葉。

レイ:あの人にも言った事なかったのに…

Bパート

冬月:街。人の作り出したパラダイスだな。

ゲンドウ:かつて楽園を追い出され、死と隣り合わせの地上と言う世界に逃げるしかなかった人類。

ゲンドウ:そのもっとも弱い生物が、弱さゆえ手に入れた知恵で作り出した自分達の楽園だよ。

冬月:自分を死の恐怖から守るため、自分の快楽を満足させるために自分達で作ったパラダイスか。

冬月:この街がまさにそうだな。自分達を守る、武装された街だ。

ゲンドウ:敵だらけの外界から逃げ込んでいる臆病者の街さ。

冬月:臆病者のほうが長生きできる。それも良かろう。

冬月:第3新東京市、NERVの偽装迎撃要塞都市、遅れに遅れていた第7次建設も終わる。いよいよ、完成だな。

冬月:4号機の事故、委員会にどう報告するつもりだ?

ゲンドウ:事実の通り、原因不明さ。

冬月:しかし、ここにきて大きな損失だな。

ゲンドウ:4号機と第2支部はいい。S2機関もサンプルは失ってもドイツにデータが残っている。

ゲンドウ:ここと初号機が残っていれば十分だ。

冬月:しかし、委員会は血相を変えていたぞ。

ゲンドウ:予定外の事故だからな。

冬月:ゼーレも、慌てて行動表を修正しているだろう。

ゲンドウ:死海文書にない事件も起こる。老人にはいい薬だよ。


BGM:2-8

アナウンス:第三管区の形態移行ならびに指向兵器試験は予定通り行われます。技術局3課のニシザイ博士、ニシザイ博士、至急開発2課までご連絡ください。

加持:せっかくここの迎撃システムが完成するのに、祝賀パーティーの一つも予定されていないとは、NERVってお堅い組織だねぇ。

マヤ:碇司令がああですもの。

加持:君はどうなのかな?

マヤ:いいんですかぁ、加持さん。葛城さんや赤木先輩に言っちゃいますよぉ?

加持:その前にその口をふさぐよ…

ミサト:お仕事進んでるぅ?

加持:ま、ぼちぼち、だな。

マヤ:では、私は仕事がありますので、これで…

BGM:1-21にチェンジ

ミサト:あなたのプライベートに口出すつもりはないけど、この非常時にうちの若い娘に手ぇ出さないでくれる?

加持:君の管轄ではないだろう?葛城ならいいのかい?

ミサト:これからの返事次第ね。

ミサト:地下のアダムとマルドゥック機関の秘密、知ってるんでしょ?

加持:ハテ?

ミサト:とぼけないで!

加持:他人に頼るとは、君らしくないな。

ミサト:なりふり構ってらんないの、余裕ないのよ、今!

ミサト:都合よくフォースチルドレンが見つかる。この裏は何?

加持:一つ教えとくよ。マルドゥック機関は存在しない。影で操っているのは、NERVそのものだ。

ミサト: NERVそのもの…碇司令が?

加持:コード707を調べてみるんだな。

ミサト:707…シンジ君の学校を?


シンジ:ミサトさん。

ミサト:なに?

シンジ:リツコさんが、明日からの出張の打ち合わせだって。

ミサト:分かったわ、ありがとう。

ミサト:また今度ね。

加持:はいはい。

加持:たまにはどうだ?お茶でも。

シンジ:僕、男ですよ。

BGM停止


シンジ:加持さんって、もっとまじめな人だと思ってました。

加持:安心してる相手だと、遠慮がないな。碇シンジ君。

シンジ:あ、すみません!

加持:いや、こっちこそすまない。嫌味のつもりはないんだ。

加持:そうだ、一つ、いいものを君に見せよう。


シンジ:スイカ、ですか?

加持:ああ、可愛いだろう?俺の趣味さ。みんなには内緒だけどな。

加持:何かを作る、何かを育てるのはいいぞ。いろんな事が見えるし分かってくる。楽しい事とかな。

シンジ:辛い事もでしょ。

加持:…辛いのは、嫌いか?

シンジ:好きじゃないです。

加持:楽しい事、見つけたかい?

シンジ:

加持:…それもいいさ。けど、辛い事を知っている人間のほうがそれだけ他人(ひと)に優しくできる。それは弱さとは違うからな。

加持:はい、もしもし?

加持:葛城から。今からシンクロテストをやるそうだ。


マヤ:プラグ深度は3.2で固定。L.C.L.濃度は現状を維持。ハーモニクスレベルはマイナス1.2、1.5、1.6、1.8、1.9、限界指数は0.2。 データはレベル3を消去。以下はMELCHIORに保存されます。

リツコ:やはりそうだわ。シンジ君のシンクロ率が落ちてきている。

ミサト:どういう事?

リツコ:何とも言えないわ。ただ、先の事件のとき何かがあったんでしょうね、精神的なものが。

ミサト:ますます3号機のパイロット、話づらいわね。

リツコ:でも、本人には明日、正式に通達されるわよ。

ミサト:


ヒカリ:きりーつ、気を付け、礼!

放送:2年Aクラスの鈴原トウジ、鈴原トウジ、至急、校長室まで。

トウジ:さーって、メシやメシ!

トウジ:何や?

ケンスケ:なんかやったの?

トウジ:いや、心当たり、ないわ。

シンジ:…?


トウジ:鈴原トウジ、入ります!

リツコ:鈴原 トウジ君ね?


シンジ:昨日の新横須賀、どうだったの?

ケンスケ:バッチシ!ところで、ちょいと気になる情報を仕入れたんだけど…

シンジ: EVA3号機?

ケンスケ:そう。アメリカで建造中だった奴さ。完成したんだろ?

シンジ:知らないなぁ。

ケンスケ:隠さなきゃならない事情も分かるけど、なぁ、教えてくれよ!

シンジ:ほんとに聞いてないよ!

ケンスケ:松代の第2実験場で起動試験をやるって噂、知らないのか?

シンジ:知らないよ。

ケンスケ:パイロットはまだ決まってないんだろ?

シンジ:分からないよ、そんなの…

ケンスケ:俺にやらしてくんないかなぁ、ミサトさん。なぁ、シンジからも頼んでくれよ!乗りたいんだよ、エヴァに!

シンジ:ほんとに知らないんだよ…

ケンスケ:じゃあ、4号機が欠番になったって言う話は?

シンジ:何それ?

ケンスケ:ほんとにこれも知らないの?第2支部ごと吹っ飛んだって、パパのところは大騒ぎだったみたいだぜ。

シンジ:ほんとに?

ケンスケ:おそらくは。

シンジ:ミサトさんからは何も聞いてない…

ケンスケ:やっぱ、末端のパイロットには関係ないからな、言わないって事は、知らなくてもいいことなんだろ?シンジにはさ。

シンジ:

ケンスケ:すまなかったな、変な事聞いて。しかし、トウジの奴、遅いなぁ。


老教師:われわれはセカンドインパクトと言うこの世の地獄から再び立ち上がったのです。今、年々子供の数も減ってきています。

トウジ:遅れて、すまんです…

老教師:話は聞いてる。席に着きなさい。あー、これからの次代をになう君たち若い世代が…


ケンスケ:さっ、帰ろうぜ。

シンジ:トウジは?

ケンスケ:あいつは遅くなるよ、当番だからな。


トウジ:


放送:下校の時刻です。教室に残っている生徒は、早く帰りましょう。

ヒカリ:鈴原!

トウジ:ん?

ヒカリ:あの、週番なんだから、ちゃんと机ならべて、日誌付けなさいよ。

トウジ:ワシ、昼飯まだやったんやで。終わったらやるわ。

ヒカリ:鈴原っていつも購買部のお弁当だね。

トウジ:作ってくれる奴もおらんからなぁ。

ヒカリ:鈴原…君。

トウジ:ん?

ヒカリ:私姉妹が二人いてね、名前はコダマとノゾミ。いつもお弁当あたしが作ってるんだけど…

トウジ:そら難儀やなぁ。

ヒカリ:だから、こう見えても、あたし意外と料理上手かったりするんだ。

トウジ:へぇ~。

ヒカリ:だからあたし、いつもお弁当の材料、余っちゃうの…

トウジ:そらもったいないなぁ。

ヒカリ:え?

トウジ:残飯処理なら、いくらでも手伝うで。

ヒカリ:え…うん、手伝って!


アスカ:はぁ~あ…加持さん!

加持:アスカか?すまない、今ちょっと忙しいんだ、後にしてくれ。

アスカ:ふぅ~ん…ミサトには会ってるくせに…

アスカ:わっ!

加持:こら!今はだめだ!

アスカ:これ私たちのシンクロデータね…え…4人?…何これ、どういう事?フォースチルドレンがなんでこいつなの?

アスカ:イヤ、わかんないわ、何なのこれぇ!

加持:


ヒカリ:フフンフ~ンフフン…


トウジ: