Aパート
ミサト:あいつ、今日もずる休みするつもりかしら…
ミサト:シンジ君!?起きなさい。いつまで学校を休む気?もう5日目よ。初号機は完全に直っているのよ。パイロットのあなたがそんなことでどうするの?シンジ君?
ミサト:はっ…
ミサト:家出か…無理もないわね。
ミサト:シンジ君!?
トウジ・ケンスケ:うっ…
トウジ:あの、えっと
ケンスケ:碇君と同じクラスの、相田と鈴原と申します。
ミサト:相田君と鈴原君…
トウジ・ケンスケ:はい!
トウジ:わし…僕が鈴原です!
ミサト:あ、もしかして、初号機のエントリープラグに入った!?
トウジ:はい!
ケンスケ:ええ
トウジ:その節はとんだご迷惑をおかけしました!
トウジ・ケンスケ:実は、
トウジ:あれから碇君がずっと休んでらっしゃるので、気になって見に寄らせてもろたんですが…
ミサト:シンジ君はね、今、NERVの訓練施設にいるの。
トウジ:ああ、そうですか…
ケンスケ:これ、机に溜まってたプリント…碇君の。
ミサト:わざわざ悪いわね。ありがと。
トウジ:ほな、僕ら失礼します。
ケンスケ:碇君によろしくお伝えください。
ミサト:ええ、伝えるわ。じゃ。
ケンスケ:これは予想外の展開だな。
トウジ:えらい別嬪さんやったなあ。
ミサト:シンジのバカ!!
ミサト:バカ…
車内放送:次は長尾峠、長尾峠です。お出口、右側に変わります。
駅の放送:本日は、第3新東京市、第7環状線をご利用いただき、まことにありがとうございます。
駅の放送:この電車は当駅にて回送電車となります。どちらさまもお忘れ物の無いように、ご降車ください。
シンジ:…………帰らなきゃ…
映画:本当に探知できなかったんですか!
映画:そうだ、直径数十mmの物体が、光速の数十%と言う速度で南極に激突したのだ!
映画:われわれの科学では予知も防ぐこともできなかったんだ!
映画:外は地獄よ!これじゃ何のための科学なの?
映画:現在、地軸変化による大気流動は3%に減少しました。
映画:じゃあ、少しは落ち着いたのかしら?
映画:だめです、津波がきます!秒速230mで接近中!
映画:先生!脱出しましょう!
映画:いや、私にはここにとどまる義務がある!
映画:先生!死ぬことは簡単です!しかし、あなたには世界の地獄を見つめる義(務が…)
ミサト:バカ…
ミサト:14歳だもんね…人類の存亡を背負わせるのは、やっぱ酷よね。
リツコ:でも、私たちはEVAの操縦を、14歳の子供達に委ねざるを得ないのよ。
ミサト:分かってる。
リツコ:で、シンジ君から連絡は?
ミサト:……
リツコ:無いの?
ミサト:…無いわ。彼、もう戻らないかもしれない。
リツコ:どうするつもり?
ミサト:別に…戻らないなら、その方がいいかも。
リツコ:なぜ?
ミサト:この間の戦闘の後でさ…
ミサト:どうして私の命令を無視したの?
シンジ:ごめんなさい…
ミサト:あなたの作戦責任者はあたしでしょ。
シンジ:はい。
ミサト:あなたには私の命令に従う義務があるの。分かるわね?
シンジ:はい。
ミサト:今後、こういうことの無いように。
シンジ:はい。
ミサト:あんたほんとに分かってんでしょうね?
シンジ:はい。
ミサト:あんたねぇ、なんでも適当に、はいはい言ってりゃいいってもんじゃないわよ!
シンジ:分かってますよ、ちゃんと。もういいじゃないですか、勝ったんだから。
ミサト:そうやって表面だけ人に合わせていれば楽でしょうけどね、そんな気持ちでEVAに乗ってたら、死ぬわよ!
シンジ:いいですよ、そんなの。
ミサト:いい覚悟だわ、と言いたいとこだけど、誉められると思ったら大間違いよ、碇シンジ君。
シンジ:誉められるも何も、どうせ僕しか乗れないんでしょ、乗りますよ。
リツコ:なるほどね。
ミサト:あの子にとってEVAに乗ることが苦痛でしかないのなら、もう乗らないほうがいいわ。絶対死ぬもの。
リツコ:でも、パイロットは必要よ。
ケンスケ:ダダダダダダダダ、ドカーン!
ケンスケ(軍人風にその1):小隊長殿!
ケンスケ(軍人風にその2):行け、相田、行くんだ!
ケンスケ(軍人風にその1):しかし、自分は小隊長殿を置いては進めません!
ケンスケ(軍人風にその2):バカモン!
ケンスケ(軍人風にその1):わあーっ!
ケンスケ(以下通常モード):よっ…と…
ケンスケ:ん…転校生…
ケンスケ:碇ーっ!
Bパート
ケンスケ:トウジのやつさ、反省してた。妹に説教されたらしいよ。私たちを救ってくれたのは、あのロボットなのよ、って。小学校低学年に説教されるな、っての。ほんと。な?
ケンスケ:夜はいいよな、あのうるさいセミが鳴かないから。小さいころは静かでよかったけど、毎年増えてる。
シンジ:生態系が戻ってる、って、ミサトさんが言ってた。
ケンスケ:フーン、ミサトさんね。まったく羨ましいよ、あんなきれいなお姉さんと一緒に住んでて、エヴァンゲリオンを操縦できて…
ケンスケ:ああ、一度でいいから、思いのままにエヴァンゲリオンを操ってみたい!
シンジ:やめた方がいいよ。お母さんが心配するから。
ケンスケ:ああ、それなら大丈夫、俺、そういうのいないから。…碇といっしょだよ。
ケンスケ:飯、食うだろ?
シンジ:うん…
シンジ:いつもこんなことしてるの?
ケンスケ:ん、うーん、まあな。
シンジ:ゲリラ戦にでもなったときのための、訓練?
ケンスケ:こんなおもちゃで何ができるんだよ、好きでやってるだけさ。
諜報部員:''碇シンジ君だね。
シンジ:はい。
諜報部員:NERV保安諜報部のものだ。保安条例第8項の適用により、君を本部まで連行する。いいね。
シンジ:はい。
トウジ:そんでお前、黙って見てただけやっちゅうんかい!?
ケンスケ:んなこと言ったって、相手はNERVの保安諜報部、プロなんだよ。
トウジ:それがどないしたんや!お前それでもマタンキ付いとんのか?
女子:やだー!
女子:変態!
女子:サル!!
ケンスケ:勝てない喧嘩するやつはバカなの。マタンキは関係ないの。
ミサト:しばらくね。
シンジ:はい。
ミサト:この2日間ほっつき歩いて、気が晴れたかしら?
シンジ:別に…
ミサト:EVAのスタンバイできてるわ。乗る?乗らないの?
シンジ:叱らないんですね、家出のこと。
ミサト:……
シンジ:当然ですよね、ミサトさんは他人なんだから。
ミサト:……
シンジ:もし僕が乗らない、って言ったら、初号機はどうするんですか?
ミサト:レイ、が乗るでしょうね。乗らないの?
シンジ:そんなことできるわけ無いじゃないですか。彼女に全部押し付けるなんて。大丈夫ですよ、乗りますよ。
ミサト:乗りたく無いの?
シンジ:そりゃそうでしょ、第一僕には向いてませんよ、そういうの。だけど、綾波やミサトさんやリツコさ…
ミサト:いい加減にしなさいよ!人のことなんか関係ないでしょう!嫌ならこっから出て行きなさい!EVAや私たちのことは全部忘れて、元の生活に戻りなさい!
ミサト:あんたみたいな気持ちで乗られるのは、迷惑よ!
シンジ:……
リツコ:サードチルドレンは、明日、第3新東京を離れます。
ゲンドウ:では、初号機のデータはレイに書き換える。
リツコ:しかし…
ゲンドウ:零号機の再起動実験の結果のいかんによらず、初号機での実験に移る。
ゲンドウ:マルドゥック機関の報告によると、フォースチルドレンはまだ見つかっていない。
リツコ:パイロットの補充は利かない、と言うことですか?
シンジ:あの、ミサトさんはどこですか?一言お別れを…
諜報部員:君はすでにNERVの人間ではない。どのようなことも教えられない。
ケンスケ:碇ーっ!
トウジ:忘れもんや!
シンジ:あの、ちょっといいですか?
シンジ:あの、ありがとう…
ケンスケ:トウジ、しゃべれよ!ほら!
トウジ:碇、二発もどついたりして悪かった、わしのこともどついてくれ!
シンジ:そんなことできないよ!
トウジ:頼む!せやないとわしの気が済まん!
ケンスケ:こーゆー恥ずかしいやつなんだよ、ま、それで丸く収まるんなら、殴ったら?
シンジ:でも…
トウジ:はよう!時間ないんやろ!?
シンジ:じゃ、一発だけ…
トウジ:ようし!こんかい!
シンジ:ンッ!
トウジ:待ったーッ!
トウジ:手加減、なしや。
シンジ:うん。
シンジ:フンっ!
ケンスケ:いたたたた!
シンジ:どうしてここが?
ケンスケ:勘、ってやつだよ。ここんとこ、何十人、って言う同級生を見送ってきたんだ。
トウジ:碇が居らんのやったら、いずれわしらもこの町から出て行かんならんようになるやろう。
トウジ:せやけど、わしら、なにもいわれへん。EVAの中で苦しんでる碇の姿、見てるからなあ。
トウジ:碇のこと、ゴチャゴチャ抜かすやつが居ってみい!わしがパチキかましたる!
トウジ:そない辛気臭い顔すんなや。
ケンスケ:元気でな。
トウジ:頑張れや。
シンジ:あの…
諜報部員:時間だ。
諜報部員:こら!
シンジ:殴られなきゃならないのは僕だ!僕は卑怯で、臆病で、ずるくて、弱虫で…
諜報部員:これ以上、手を焼かせるな。
リツコ:行っちゃったわね。これでよかったの?
ミサト:ヤマアラシのジレンマか。身を寄せるほど相手を傷付ける、こういうことか…あの子、ああいう言い方でしか自分の気持ちを伝えられないんだわ。
駅の放送:2番線に、厚木行き、特急リニアが参ります。危ないですから、黄色い線の内側までお下がりください。
駅員:2番線の電車は、4時20分発、厚木行きの政府専用特別列車です。一般の方は柵の内側には入れません。
駅員:なお、許可の無い方のご乗車はかたく禁じられております。くれぐれも、ご注意ください。
(ミサト:頑張ってね)
ケンスケ:おい、あれ…
トウジ:あの時の別嬪さんや。
注)ミサト、溜め息多数。47秒の止めカット。
駅の放送:まもなく、4番線に、強羅行き各駅停車が参ります。危ないですから、黄色い線の内側までお下がりください。小さいお子様をお連れの方は、特にご注意ください。
駅員:4番線の電車は、4時32分発、強羅行き折り返しの各駅停車です。ご利用の皆様は、ご乗車になってお待ちください。
駅員:はい、まもなく電車が入ります、黄色い線の内側まで下がってください。
シンジ:た、ただいま…
ミサト:おかえりなさい。