Aパート
オペレータ:EVA三体のアポトーシス作業は、MAGIシステムの再開後予定通り行います。
オペレータ:作業確認。450より670は省略。
マコト:発令所、承認。
リツコ:さすがマヤ、早いわね。
マヤ:それはもう、先輩の直伝ですから。
リツコ:あ、待って、そこ。A8の方が早いわよ。ちょっと貸して。
マヤ:さっすが先輩…
ミサト:どぉ?MAGIの診察は終わった?
リツコ:大体ね。約束通り、今日のテストには間に合わせたわよ。
ミサト:さすがリツコ。同じ物が3つもあって、大変なのに。
リツコ:冷めてるわよ。それ。
ミサト:ぐっ!
オペレータ:MAGIシステム、再起動後、自己診断モードに入りました。
マヤ:第127次、定期検診異常無し。
リツコ:了解。お疲れさま。みんな、テスト開始まで休んでちょうだい。
リツコ:異常無し、か…母さんは今日も元気なのに、私はただ年を取るだけなのかしらね…
アスカ:えぇ~?また脱ぐのォ?
リツコ:ここから先は超クリーンルームですからね。シャワーを浴びて下着を替えるだけでは済まないのよ。
アスカ:なんでオートパイロットの実験で、こんなことしなきゃいけないのよ~
リツコ:時間はただ流れているだけじゃないわ。EVAのテクノロジーも進歩しているのよ。新しいデータは常に必要なの。
シンジ・アスカ:えぇ~!?
アスカ:ほら、お望みの姿になったわよ。17回も垢を落とされてね!
リツコ:では3人とも、この部屋を抜けてその姿のままエントリープラグに入ってちょうだい。
アスカ:えー!
リツコ:大丈夫。映像モニターは切ってあるわ。プライバシーは保護してあるから。
アスカ:そーいう問題じゃないでしょう!気持ちの問題よ!
リツコ:このテストは、プラグスーツの補助無しに、直接肉体からハーモニクスを行うのが趣旨なのよ。
ミサト:アスカ、命令よ。
アスカ:もぉ~う、絶対見ないでよ!
オペレータ:各パイロットエントリー準備完了しました。
リツコ:テストスタート。
オペレータ:テストスタートします。オートパイロット、記憶開始。
オペレータ:モニター異常なし。
オペレータ:シミュレーションプラグを挿入。
オペレータ:システムを、模擬体と接続します。
マヤ:シミュレーションプラグ、MAGIの制御下に入りました。
ミサト:おぉ~、早い早い!MAGI様様だわ。初実験のとき、一週間もかかったのが嘘のようね。
オペレータ:テストは約3時間で終わる予定です。
リツコ:気分はどう?
レイ:何か違うわ。
シンジ:うん。いつもと違う気がする。
アスカ:感覚がおかしいのよ、右腕だけはっきりして、後はぼやけた感じ。
リツコ:レイ、右手を動かすイメージを描いてみて。
レイ:はい。
オペレータ:データ収集、順調です。
リツコ:問題はないようね…MAGIを通常に戻して。
リツコ:ジレンマか…作った人間の性格が伺えるわね。
ミサト:何言ってんの、作ったのはあんたでしょう?
リツコ:あなた何も知らないのね。
ミサト:リツコが私みたくベラベラと自分の事話さないからでしょ。
リツコ:…そうね…私はシステムアップしただけ。基礎理論と本体を作ったのは、母さんよ。
冬月:確認しているんだな。
シゲル:ええ、一応。
シゲル:3日前に搬入されたパーツです。ここですね、変質しているのは。
冬月:第87蛋白壁か。
シゲル:拡大するとシミのようなものがあります。何でしょうね、これ。
マコト:浸蝕だろ?温度と伝導率が若干変化しています。無菌室の劣化はよくあるんです。最近。
シゲル:工期が60日近く圧縮されてますから。また気泡が混ざっていたんでしょう。杜撰ですよ、B棟の工事は。
冬月:そこは、使徒が現れてからの工事だからな。
マコト:無理ないっすよ、みんな疲れてますからね。
冬月:明日までに処理しておけ。碇がうるさいからな。
マコト:了解。
リツコ:また水漏れ?
マヤ:いえ、浸蝕だそうです。この上の蛋白壁。
リツコ:参ったわね。テストに支障は?
マヤ:今のところは何も。
リツコ:では続けて。このテストはおいそれと中断するわけにいかないわ。碇司令もうるさいし。
マヤ:了解。
マヤ:シンクロ位置、正常。
オペレータ:プラグ深度変化なし。
オペレータ:シミュレーションプラグを模擬体経由でエヴァ本体と接続します。
オペレータ:EVA零号機、コンタクト確認。
オペレータ:A.T.フィールド、出力2ヨクトで発生します。
リツコ:どうしたの?
BGM:1-19前半
オペレータ:シグマユニットAフロアに汚染警報発令。
オペレータ:第87蛋白壁が劣化、発熱しています。
オペレータ:第6パイプにも異常発生。
マヤ:蛋白壁の浸蝕部が増殖しています。爆発的スピードです!
リツコ:実験中止、第6パイプを緊急閉鎖!
マヤ:はい!
オペレータ:60、38、39、閉鎖されました!
オペレータ:6の42に浸蝕発生!
マヤ:だめです、浸蝕は壁伝いに進行しています!
リツコ:ポリソーム、用意!
リツコ:レーザー、出力最大!侵入と同時に、発射!
マヤ:浸蝕部、6の58に到達、来ます!
BGM停止
一同:…
レイ:きゃあっ!
リツコ:レイ!?
BGM:1-3
マヤ:レイの模擬体が、動いています!
リツコ:まさか!
マヤ:浸蝕部、さらに拡大、模擬体の下垂システムを侵しています。
ミサト:レイは!?
マヤ:無事です!
リツコ:全プラグを緊急射出!レーザー急いで!
ミサト:A.T.フィールド!?
リツコ:まさか!
ミサト:何、これ…?
リツコ:分析パターン、青。間違いなく、使徒よ。
冬月:使徒?使徒の侵入を許したのか!?
リツコ:申し訳ありません。
冬月:言い訳はいい。セントラルドグマを物理閉鎖、シグマユニットと隔離しろ!
シゲル:セントラルドグマを物理閉鎖、シグマユニットと隔離します。
ミサト:ボックスは破棄します!総員待避!
ミサト:何してるの!早く!
アナウンス:シグマユニットをBフロアより隔離します。全隔壁を閉鎖、該当地区は総員待避。
ゲンドウ:分かっている。よろしく頼む。
ゲンドウ:警報を止めろ!
シゲル:け、警報を停止します!
ゲンドウ:誤報だ。探知器のミスだ。日本政府と委員会にはそう伝えろ。
シゲル:は、はい!
マコト:汚染区域はさらに下降!プリブノーボックスからシグマユニット全域へと広がっています!
冬月:場所がまずいぞ!
ゲンドウ:ああ、アダムに近すぎる。
ゲンドウ:汚染はシグマユニットまでで抑えろ。ジオフロントは犠牲にしても構わん。EVAは?
マコト:第7ケージにて待機、パイロットを回収次第、発進できます。
ゲンドウ:パイロットを待つ必要はない。すぐ地上へ射出しろ。
シゲル・マコト:え?
ゲンドウ:初号機を最優先だ。そのために他の二機は破棄しても構わん。
マコト:初号機を、ですか?
シゲル:しかし、EVA無しでは、使徒を物理的に殲滅できません!
ゲンドウ:その前にEVAを汚染されたらすべて終わりだ。急げ!
シゲル・マコト:はい!
アナウンス:シグマユニット以下のセントラルドグマは、60秒後に完全閉鎖されます。真空ポンプ作動まで、後30秒です。
加持:あれが使徒か…仕事どころじゃなくなったな…
加持:よっ!
オペレータ:セントラルドグマ、完全閉鎖。大深度施設は、侵入物に占拠されました。
冬月:さて、EVA無しで、使徒に対し、どう攻める?
Bパート
BGM:2-11
リツコ:ほら、ここが重水の境目、酸素の多いところよ。
マヤ:好みがハッキリしてますね。
シゲル:無菌状態維持のため、オゾンを噴出しているところは汚染されていません。
ミサト:つまり、酸素に弱い、ってこと?
リツコ:らしいわね。
マコト:オゾン注入、濃度、増加しています。
シゲル:効いてる効いてる。
冬月:いけるか?
マヤ:0Aと0Bは回復しそうです。
シゲル:パイプ周り、正常値に戻りました。
マコト:やはり、中心部は強いですね。
冬月:よし、オゾンを増やせ。
リツコ:変ね…
シゲル:あれ?増えてるぞ。
マコト:変です…発熱が高まってます。
シゲル:汚染域、また拡大しています!
マヤ:だめです、まるで効果が無くなりました。
マコト:今度はどんどんオゾンを吸っています!
リツコ:オゾン止めて!
リツコ:すごい…進化しているんだわ。
BGM:3-4
ミサト:どうしたの!
シゲル:サブコンピューターがハッキングを受けています!侵入者不明!
マコト:こんな時に!くそっ!Cモードで対応!
シゲル:防壁を解凍します!疑似エントリー、展開!
オペレータ:疑似エントリーを回避されました。
シゲル:逆探まで18秒!
オペレータ:防壁を展開!
オペレータ:防壁を突破されました!
オペレータ:疑似エントリーをさらに展開します!
マコト:こりゃあ人間技じゃないぞ…
シゲル:逆探に成功…この施設内です…B棟の地下…プリブノーボックスです!
マヤ:光学模様が変化しています。
シゲル:光ってるラインは電子回路だ。こりゃあコンピューターそのものだ。
マコト:疑似エントリー展開…失敗、妨害されました!
ミサト:メインケーブルを切断。
オペレータ:だめです、命令を受け付けません!
ミサト:レーザー打ち込んで!
マヤ:A.T.フィールド発生、効果無し!
シゲル:保安部のメインバンクにアクセスしています。パスワードを走査中、12桁、16桁、D-WORDクリア!
マコト:保安部のメインバンクに侵入されました!
マコト:メインバンクを読んでます、解除できません!
冬月:奴の目的は、何だ!?
シゲル:メインバスを探っています…このコードは…やばい、MAGIに侵入するつもりです!
ゲンドウ:I/Oシステムをダウンしろ。
シゲル:カウント、どうぞ!
マコト:3、2、1!
マコト:電源が切れません!
マヤ:使徒、さらに侵入、MELCHIORに接触しました!
マヤ:だめです!使徒にのっとられます!
マヤ:MELCHIOR、使徒にリプログラムされました!
アナウンス:人工知能、MELCHIORより、自律自爆が提訴されました。否決、否決、否決、否決。
シゲル:今度は、MELCHIORがBALTHASARをハッキングしています!
マコト:くそぉ、早い!
シゲル:なんて計算速度だ!
リツコ:ロジックモードを変更!シンクロコードを15秒単位にして!
シゲル・マコト・マヤ:了解!
冬月:どのくらい持ちそうだ?
シゲル:今までのスピードから見て、2時間くらいは。
ゲンドウ:MAGIが、敵に廻るとはな…
リツコ:…
リツコ:彼らはマイクロマシン、細菌サイズの使徒と考えられます。
リツコ:その個体が集まって群れを作り、この短時間で知能回路の形成にいたるまで、爆発的な進化を遂げています。
冬月:進化か。
リツコ:はい。彼らは常に自分自身を変化させ、いかなる状況にも対処するシステムを模索しています。
冬月:まさに、生物の生きるためのシステムそのものだな。
ミサト:自己の弱点を克服、進化を続ける目標に対して、有効な手段は死なばもろとも。MAGIと心中してもらうしかないわ。
ミサト:MAGIシステムの物理的消去を提案します。
リツコ:無理よ、MAGIを切り捨てることは、本部の破棄と同義なのよ。
ミサト:では、作戦部から正式に要請するわ。
リツコ:拒否します。技術部が解決すべき問題です。
ミサト:なに意地張ってんのよ!
リツコ:私のミスから始まったことなのよ。
ミサト:あなたは昔っからそう。一人で全部抱え込んで、他人を当てにしないのね。
リツコ:…使徒が進化しつづけるのなら、勝算はあります。
ゲンドウ:進化の促進かね。
リツコ:はい。
ゲンドウ:進化の終着地点は自滅、死、そのものだ。
冬月:ならば、進化をこちらで促進させてやればいいわけか。
リツコ:使徒が死の効率的な回避を考えれば、MAGIとの共生を選択するかもしれません。
マコト:でも、どうやって?
リツコ:目標がコンピューターそのものなら、CASPERを使徒に直結、逆ハックを仕掛けて、自滅促進プログラムを送り込むことができます。が、
マヤ:同時に使徒に対しても防壁を開放することにもなります。
ゲンドウ:CASPERが早いか、使徒が早いか、勝負だな。
リツコ:はい。
ミサト:そのプログラム、間に合うんでしょうね。CASPERまで侵されたら、終わりなのよ。
リツコ:約束は守るわ。
アナウンス:R警報発令、R警報発令、NERV本部内部に緊急事態が発生しました。D級勤務者は、全員待避してください。
マヤ:な、何ですか、これ。
リツコ:開発者の悪戯書きだわ。
マヤ:すごい、裏コードだ!MAGIの裏コードですよ、これ!
ミサト:さながら、MAGIの裏技大特集、ってわけね。
マヤ:わぁ~、こんなの見ちゃっていいのかしら…わぁ!びっくり!これなんて、intのCよぉ!
マヤ:これなら、意外と早くプログラムできますね、先輩!
リツコ:うん…ありがとう、母さん…確実に間に合うわ。
リツコ:レンチ取って。
ミサト:大学のころを思い出すわね…
リツコ:25番のボード。
ミサト:ねぇ、少しは教えてよ、MAGIのこと。
リツコ:長い話よ。その割に面白くない話。
リツコ:人格移植OSって知ってる?
ミサト:ええ、第7世代の有機コンピュータに個人の人格を移植して思考させるシステム。EVAの操縦にも使われている技術よね。
リツコ:MAGIがその第1号らしいわ。母さんが開発した、技術なのよ。
ミサト:じゃ、お母さんの人格を移植したの?
リツコ:そう。
リツコ:言ってみれば、これは、母さんの脳味噌そのものなのよ。
ミサト:それでMAGIを守りたかったの?
リツコ:違うと思うわ。母さんのこと、そんなに好きじゃなかったから。科学者としての判断ね。
マコト:きたっ!
BGM:2-15
マコト:BALTHASARが、乗っ取られました!
アナウンス:人工知能により、自律自爆が決議されました。
ミサト:始まったの!?
アナウンス:自爆装置は、三者一致の後、02(ゼロニ)秒で行われます。
アナウンス:自爆範囲は、ジオイド深度マイナス280、マイナス140、ゼロフロアーです。
アナウンス:特例582発動下のため、人工知能以外によるキャンセルはできません。
シゲル:BALTHASAR、さらにCASPERに侵入!
冬月:押されてるぞ!
シゲル:なんて速度だ!
アナウンス:自爆装置作動まで、後、20秒。
冬月:いかん!
シゲル:CASPER、18秒後に乗っ取られます!
アナウンス:自爆装置作動まで、後、15秒。
ミサト:リツコ、急いで!
アナウンス:自爆装置作動まで、10秒、
リツコ:大丈夫、一秒近く余裕があるわ。
アナウンス:9秒、8秒、
ミサト:一秒って…
リツコ:ゼロやマイナスじゃないのよ。
アナウンス:7秒、6秒、5秒
リツコ:マヤ!
マヤ:行けます!
アナウンス:4秒、3秒
リツコ:押して!
アナウンス:2秒、1秒、0秒。
BGM停止
アナウンス:人工知能により、自律自爆が解除されました。
シゲル・マコト:いゃったぁーッ!
アナウンス:なお、特例582も解除されました。MAGIシステム、通常モードに戻ります。
アナウンス:R警報解除、R警報解除、総員、第一種警戒態勢に移行してください。
シンジ:何がどうなっているんだろう?
レイ:……
アスカ:もぉーう、裸じゃどこにも出れないじゃないのぉ!早く誰か助けてー!
アナウンス:シグマユニット開放、MAGIシステム再開まで、マイナス、03(ゼロサン)です。
リツコ:もう年かしらね、徹夜がこたえるわ。
ミサト:また約束守ってくれたわね。お疲れさん。
リツコ:ありがとう。
リツコ:ミサトの入れてくれたコーヒーを、こんなに美味いと思ったのは始めてだわ。
ミサト:う…ふ…ふん…
リツコ:死ぬ前の晩、母さんが言ってたわ。MAGIは三人の自分なんだって。
リツコ:科学者としての自分、母としての自分、女としての自分。その3人がせめぎあってるのが、MAGIなのよ。
リツコ:人の持つジレンマをわざと残したのね。
リツコ:実はプログラムを微妙に変えてあるのよ。
リツコ:私は母親にはなれそうも無いから、母としての母さんは分からないわ。
リツコ:だけど、科学者としてのあの人は尊敬もしていた。
リツコ:でもね、女としては憎んでさえいたの。
ミサト:今日はお喋りじゃない…
リツコ:たまにはね…
リツコ:CASPERにはね、女としてのパターンがインプットされていたの。最後まで女でいることを守ったのね、ほんと、母さんらしいわ。