KHII
ソラと単騎で一戦を交えたあと、より大きな力を手に入れようとして不完全な人の心のキングダムハーツと融合する際のゼムナスのセリフ。
「憎しみに震える心──」
「怒りに燃える心──」
「妬みに焦がれる心──」
「愚かなるアンセムは
心の本質を知らぬと言った
だが 私は知っている
心こそが力を生み出すのだ!」
鎧ゼムナス戦1回目後、ソラはこの言葉に対して「心は怒りや憎しみだけじゃない いろんなものが詰まってるんだ」と述べている。
「心が力になる」というのはキングダムハーツシリーズ全体で触れられているテーマではあるのだが、ゼムナスが自ら手に入れようとする感情は、どれも負の方向に強い心ばかりで、それではとても心の本当の強さが手に入るのか大いに疑問である。
- 考えてみれば、古今東西の物語を見渡しても、ここまで負の感情のみを欲して行動する悪役も珍しいのではなかろうか。
- 余談だが、後にマスター・ゼアノートも「怒りを力とするのだ」と言っている。
長い間心の研究をしてきたが、その本質にたいして我々は今も昔の無知のままであると語った賢者アンセムを引き合いに出して「愚か」と詰るあたり、ゼムナスは自分の理論に疑問を抱いていないようであるが……。
Days
人の心のキングダムハーツが初めて形を成した時に機関のメンバーを集めてゼムナスが心の集合体が内包する感情を語る場面があるが、「憎しみ」「怒り」「妬み」だけではなく、意外にも「幸せ」について触れている。
- 一応耳ざわりがいいように一般論で話したのかもしれない。
KHIII
キーブレード墓場でソラ達に敗北して消滅し始めたゼムナスが、心を得た今、何を感じているのか、これでよかったのか尋ねるソラに対して以下のように返した。
「そうだな 私は仲間も得たが彼らを捨て駒にもした
結局残ったものは孤独──
長い時間忘れていた感情がやっと戻ったと思えば──
それはさみしさだった
こんな感情なら やはり必要なかったな──」
この言葉に対してソラは「それが人間だよ、ゼムナス」と返している。
XIII機関員は基本的に「心を手に入れる」事を目的として機関に所属している。
各々がどういう理由で心を欲していたかは不明だが、KHII等ではよく感情が無いことについて取り沙汰されるため、失った感情を取り戻すため、と言う事が理由の一つとして考えられる。
その中で、ゼムナスは(真の目的のカモフラージュとしても)前述のとおり心(感情)を「力の源になるもの」として欲している。
ゼムナスは「さみしさ」を必要ないものとしているが、それはさみしさが力を生まない感情だからこそ、厭っているのだろうか。
KHIIでは、彼は「悲しみ」の演技をした上で何に対しても「何も悲しくはない」と言っていたが、この時は孤独、さみしさを感じたことに悲しみを抱いているように見える。
「さみしさ」が力にならないのではなく、悲しい感情だからこそそれを厭い、憎しみに震える心や怒りに燃える心、妬みに焦がれる心が欲しかったのかもしれない。
あるいは心がどういうものか忘れてしまったゼムナスはさみしさによって心の痛み、ゼムナスに言わせれば心の弱い側面を身をもって感じたと同時に、それが皮肉にも心を得ようとする過去の行いによって引き起こされたことにも言及していることから、いくらかは後悔の念も感じていたのかもしれない。ただ、「やはり」と言っているところを見ると、少なくともこの時点では、あるいは最初から本当は「心は必要ない」と考えていたのかもしれない。その後に続く台詞から考えると、彼が本当に怒りや憎しみや妬みなどの感情を手に入れて強くなれたかは分からない。