上原式プロテクト

Last-modified: 2024-05-02 (木) 01:07:51

2018年オフに巨人が正規のプロテクトを使わずに上原浩治のFA人的補償指名を回避したとされる疑惑、またはその手法のこと。

概要

問題となった巨人の行動は以下の通り。

  • 10月29日、「手術した左膝の経過次第で再契約する」という条件で上原浩治に自由契約を通告。
  • 11月26日、西武から炭谷銀仁朗、11月30日、広島から丸佳浩をFAで獲得。
  • 12月7日、西武に対して、12月12日、広島に対してプロテクトリストを送付。
  • 12月14日、上原と再契約

この一連の流れがあまりにもタイミングが良すぎることから、「プロテクト枠を節約するために一時的に上原を自由契約にしただけではないか?」という疑惑を産み、前年の岩瀬式プロテクトを彷彿とさせたため「上原式プロテクト」と命名された。

この疑惑については複数のマスコミが触れており、プロ野球関係者からも同様の指摘がなされた


評価

擁護派からは

  • 西武や広島が上原を欲しかったのならば自由に交渉できたのだから、そもそも自由契約にプロテクト効果はない*1
  • 上原によれば、巨人とは再契約するという合意があったわけではなく、膝の状態がよくなったから再契約してもらえたに過ぎず、FAの件とは無関係。
  • 仮にプロテクト枠節約のために自由契約を利用していたとしても、それはルール上禁止された行為ではないので問題ない。
  • 巨人はアンチ活動が盛んなために過剰に反応されているだけではないか。

否定派からは

  • プロテクト枠は様々な要素を考慮してギリギリの調整になるのだから、結果的に上原の需要がなかったとしても、功労者の上原をプロテクトするかどうか迷う必要がなくなる時点で巨人は利益を得ている。
  • 人的補償はFAによる自由競争の敗者を救済するための制度なのだから、自由契約の上原は自由競争で巨人に勝てば獲得可能だと言うのは本末転倒。
  • 今回当事者であり、過去には入団時に裏金を受け取っていた上原の発言を信用できない。上原の意思と関係なく巨人がプロテクト枠節約を企てていた可能性もある。
  • ルール上問題がなければ何をやってもいいということはないし、少なくともルールに問題があるのは明らかだ。
  • 巨人には「空白の一日事件」や「KKドラフト事件」など、ルールの盲点を突く事件を起こしてルール変更のきっかけを作ってきた過去があるので今回も同様だ。

といった意見が出ている。
いずれにせよ、岩瀬式プロテクトと同様に「今回の真相はさておき、悪用しようと思えば出来る抜け道が存在するのは事実」という状態であり、プロテクト制度の改善案について、なんJで岩瀬式プロテクトのときと同様に熱いレスバトルが展開された。


実際の人的補償指名

12月20日には炭谷銀仁朗の人的補償に内海哲也が、翌2019年1月7日に丸佳浩の人的補償として長野久義がそれぞれ指名された。
両者とも巨人以外の指名を断った経験があり、また功労者と言っても過言では無い結果を残しているが、ピークが過ぎた途端に人的補償で移籍したため、

  • 先発で5勝5敗の数字を残した内海や、規定未到達とはいえ打率.290で2桁本塁打を打っている長野ですらプロテクト外だったのだから、中継ぎで0勝5敗、高齢、故障持ちの上原は最初からプロテクトが必要な選手ではなく、枠の節約になっていない。

という擁護意見が追加された。
だがその後は「内海と長野をプロテクトしなかったことは適切だったのか?」についてに論点が移り、「上原の扱いにプロテクト枠節約の意図はあったのか?」についての議論は下火となっていった。

また、再契約した上原自身は翌年の開幕直後に引退を決断し、5月に任意引退公示がなされた。
結果論にはなるが、物議を醸したこの行為も完全な無駄になってしまった。


その後

2020年オフ、巨人は若手5選手を自由契約にし、のち育成再契約するという本件と似た行為を行う。この時、上原がYahoo!ニュースへ寄稿した記事においてこの行為を批判するとともに、自身のプロテクト騒動の件に触れ、「密約はなかった」とあらためて否定した。

FA人的補償の隠れみの!? 育成なのに年俸数千万円!? 「抜け道」になり始めた育成契約の健全化を
https://news.yahoo.co.jp/byline/ueharakoji/20201217-00212997/

私自身、左膝を手術した18年オフに巨人を自由契約になった後、再契約を結んだとき、「のちに再契約する密約」があってプロテクトに入れなくて済むように自由契約になったという疑いをかけられたが、巨人からそんな話はなかった。いま考えても、バカげた報道だった。今回も巨人の考えははっきりとは言えないが、育成契約が「グレーゾーン」であることは間違いない。


関連項目


*1 現に上原は「自由契約中、どこからもオファーがなかった」と発言している。