タミュリス【1】
「僕には記憶がないのです。どこで何をしていたのか……それを知りたい」 かつて神に不敬を働き、記憶を失った天才吟遊詩人・タミュリス。彼に残されたのは歌声だけであった。 |
タミュリス【2】
「もうどのくらい、こうして彷徨っただろう……」 ニンフの血をひくタミュリスは老いることがない。すでに知人も係累も死に果て、彼はひとりきりで自らの記憶を探し続ける。 |
タミュリス【3】
「もう幾度目の春を迎えたのか、覚えていないほどだ」 いつまでも姿が変わらないタミュリスの伝説となり、親から子へと語り継がれる。伝承を語るべき彼が伝承となってしまったのだ。 |
タミュリス【4】
「誰でもいい? 僕のことを教えてくれ!」 タミュリスの悲痛な叫びがこだまする。彼のことを知るものは絶え、それでも死ねない。それがタミュリスに与えられた罰である。 |