【ハロウィン】バアル【1】
「さあ、祭りの夜の始まりよ!」 そう叫んでバアルはライブステ-ジへと向かった。今宵はハロウィン。魔界のトップシンガ-でもある彼女が一年のうち最も輝く日なのだ。普段は控えめな彼女だが今日はとびきりオシャレな衣装を着ている。 |
【ハロウィン】バアル【2】
「さすがは昔からのファン、この姿でも『わかる』のね」 ジャックオ-ランタンのマスクをかぶったままのバアル。だが、歌い始めるとともに会場前列のやや奥から大きな声援が湧いた。彼女がデビュ-した初期からのファンがいつも陣取っている席だ。 |
【ハロウィン】バアル【3】
「この歌い方は、最初から変えていないものね」 マスクの奥から響く声はくぐもっているが、歌い方でファンには歌い手の区別がつくらしい。バアルは本格的な歌のトレ-ニングを積んでいる。ストレ-トな正統派の歌だ。 |
【ハロウィン】バアル【4】
「私の個性が強すぎるのもあると思うの」 バアルは苦笑する。彼女の歌唱技術が高すぎて、正統派の歌い手は誰も彼女の真似はできないのだ。だが、どれだけ個性的な歌声を集めても、バアルの歌声がかすむことはない。天使の歌声を持つ悪魔の歌は、今日も魔界に響き続ける。 |