サーペント【1】
「ふうん、今度のお船は立派ね。がんばったじゃない」 船乗りたちが恐れる死の海域に、真新しい船体が到達した。新技術で建造された軍艦の初航海。その目的は単なるお披露目ではなく、この海域の制圧にあるはずだった。 |
サーペント【2】
「......危ないものを積んでいるわね? 大砲、かしら」 新造艦の艦長は、船を飲み込む大波を起こしているものの正体を、海を牛耳る巨大な怪物だと予測していた。だが、どのような怪物だろうと、このために設計した新型艦砲の威力を受ければ一たまりもあるまい。 |
サーペント【3】
「でも、当たらなきゃ意味がないのよ」 初めて生の目で『それ』を見た艦長の顔は、驚きに満たされた。大波を操っているのは想像していたような怪物ではない。信じがたいことに、見目麗しき女性の姿をしていたのだ。 |
サーペント【4】
「またいらっしゃい、遊んであげる」 連射される艦砲。だが怪物退治用の大砲で小さな人影を狙うのは、やはりきわめて難しい。新造艦は荒れ狂う波に飲まれ、海のもくずとなった。艦長は生き残ったものの、この信じがたい事実を国に報告できるわけもなく、ただ木の切れ端にしがみついたまま波の上を漂うのだった。 |