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人属性/LLR/【新春】八百比丘尼

Last-modified: 2018-03-19 (月) 23:45:22

【新春】八百比丘尼【１】

「あの時、頭をなでた童ももう生きてはいまい」
数百年前に人魚の肉を食べて以来、八百比丘尼は若い尼の姿のまま世界をさまよっている。今年は百年ぶりにこの地を訪れた。周期的にはまだ少し早い気もしたが、この地はたびたび飢饉を起こしている。八百比丘尼は一刻も早くそれを救ってやりたかった。

「この水路を、もう五寸ほど広く掘るのじゃ、さすれば田畑は潤うであろう」
八百比丘尼には、百年前にこの地を離れたのち、各地を回って調べあげた農学の知識があった。本当はもう少し早く訪れてもよかったのだが、自分の顔を知るものが生き残っている間に再び同じ地を訪れるのは、どうしても足が重かった。

「わらわがこの地を訪れるのは初めてじゃ、他人の空似ではなかろうか?」
百年前に頭を撫でてやった童子は、生きていた。歳を重ね老いてはいたが、彼は八百比丘尼のことを覚えていた。とっさに嘘をつき誤魔化したが、気づかれていたかもしれない。

「永劫の時をひとり生き続けるｰｰこの生の意味を知りたい」
永遠に等しい時を生きねばならない業を背負った八百比丘尼。その意味を探し求めて、ひとり各地を歩き廻る。蓄えた膨大な知識と会得した術で、苦しむ世の人々を救いながら。