【星守】トレミー【1】
「どうしたのじゃ、こんな夜遅くに出歩いては体が冷えるぞよ」 夜、営舎から姿を消した軍師を探しにきた若い兵士は、丘の上に軍師・トレミーの姿を見つけた。この軍の命運を握る大軍師は、一兵卒にすぎない若い兵士を逆に心配してくれた。 |
【星守】トレミー【2】
「お主はもう帰れ、明日は決戦じゃ。いやいや、わしはもう少し星を眺めていく」 長きに渡って続いた戦争の最終決戦がいよいよ始まるであろうことは、両軍の誰もが薄々感じていた。そのような夜に軍師が営舎を離れ、星を眺めているのだ。将軍たちはあきれ、あるいは困惑していた。 |
【星守】トレミー【3】
「見よ、さそり座の男がいて座の足元を貫いている」 これは、敵に伏兵がある証なのだと軍師はいう。だが、どこに伏兵を隠したのかがわからない。それを見極めるために星を見ているのだと軍師は星を見上げたまま語った。星の動きで軍の動きがわかるなど、若い兵士には、にわかには信じがたい話だ。 |
【星守】トレミー【4】
「おお、明けの明星か……む、あの位置は」 結局、若い兵士は夜通し軍師につき合い星を見ることになった。明け方になって営舎に帰った軍師は、将軍らに一言残すと、すぐさま眠りについてしまった。だが星の導きから生み出された策は、軍師が再び目を覚ますよりも先に、軍へ大きな勝利をもたらしたのだった。 |