【花神】ブリュンヒルデ【1】
「春のうららかさの中、身を休めることができるなんて……この上ない幸せです」 花々であつらえたドレスを来た少女が、花畑の中に座っていた。愛らしい乙女に見えるが、彼女はヴァルキューレ。ブリュンヒルデの名を持つ勇ましき戦乙女だった。 |
【花神】ブリュンヒルデ【2】
「毎年、戦場で迎えていた春と、この春が同じものとは不思議なものです」 ブリュンヒルデたち戦乙女の役割は、戦場で死した戦士たちをヴァルハラへと誘うことだった。だから、いつもは戦場を駆けまわっている。こうして春の陽気の中でくつろぐのは、特別なことだった。 |
【花神】ブリュンヒルデ【3】
「血の赤も、この花の赤も同じ色のはずなのに……この花を見ていると優しい気分になります」 血に染まっていない大地をゆっくりと眺める機会は、ブリュンヒルデには珍しいことだった。死に汚されていない野原には、みずみずしい生命が満ちあふれている。永遠にこの時間が続けばいいとさえ思った。 |
【花神】ブリュンヒルデ【4】
「けれど、行かなければなりませんね、今度は戦場に咲く花を見に」 春の夕日が暮れた頃、ブリュンヒルデは立ちあがる。休暇は終わった。花のドレスは脱ぎ捨て、鎧姿に戻る時が来たのだ。ブリュンヒルデは心をいやしてくれた花々に礼を言うと、本来あるべき場所へと戻っていった。 |