イアソン【1】
「そいつの人相を教えろ。いますぐにだ」 イアソンの声は怒りに震えていた。彼女が面倒をみている戦災孤児の一人……気だてのよい少女が、他の雇兵団の男にちょっかいを出されたのだという。そのせいで、少女は婚約者から見限られてしまったのだ。 |
イアソン【2】
「ありがとう。これが、今日までのそいつの人相だな」 絵のうまい子供に描かせた人相書きを受け取ると、イアソンはすぐに外へでていった。あえて今日までの、と言ったのには理由がある。その男の人相は明日から変わってしまうという意味だ。 |
イアソン【3】
「こいつを出しな。隠し立てすると、あんたらのタメにならないよ」 イアソンは雇兵団のたまり場になっている酒場に乗り込んだ。ひとりで乗り込んできたイアソンをあなどって、男たちはニヤニヤと薄ら笑いを浮かべる。それどころか、イアソンの目の前で、これ見よがしに酒場の少女にもちょっかいを出しはじめた。 |
イアソン【4】
「せっかく描いてもらったのに悪かったな。あの場所にいた全員、同じ人相にしちまったよ」 帰ってきたイアソンは、絵を描いてくれた子に人相書きを返した。もはや、こんな顔の男は世界のどこにもいない。イアソンの拳がそれを変えてしまったのだ。 |