エンヴィー【1】
「ごきげんよう。みなさま、今日は良いお天気ですわね」 彼女は良家の息女で、名をエンヴィーといった。家柄にふさわしい上品さで級友たちにあいさつをする。美貌、立ち振る舞い、どれをとっても美しく、そつがない。多くの羨望を一新に受ける少女だ。 |
エンヴィー【2】
「まあ、そんな事が……。大変でしたのね」 少年たちは憧れに満ちた顔でエンヴィーをみつめている。少女たちはエンヴィーを取り囲むと、早く聞いてほしくてたまらないのか、我先にと話し始める。少年たちには笑顔を、少女たちには共感の言葉を、エンヴィーは相手が欲しいものを本能的に悟り、的確に返す。 |
エンヴィー【3】
「あら、お顔の色がすぐれませんわよ、お体の具合はいかがです?」 エンヴィーは隣にたたずむ女性に、おもむろに声をかけた。彼女がエンヴィーをつらそうな顔で見つめていたからだ。女は違うのだと苦笑し、首を振る。 |
エンヴィー【4】
「わたくしに、いたらない部分があったのかしら? 直しますから、遠慮なくおっしゃってくださいな」 エンヴィーはいつでも皆を大切にし、別け隔てなく気遣う。女はそんなエンヴィーのことが好きで、愛しくて、だからこそ許せなかった。その嫉妬は、皆に愛されるエンヴィーに対するものか、それとも……。 |