幻想のミネルバナイツ Wiki*

チュリーラ【１】

「ただの『小悪党』などと舐めて貰っては困るな。我々は歴とした『悪党』だ」
凍れる女帝。ﾁｭﾘｰﾗはそう形容されている。ﾌﾞﾘｻﾞｰﾄﾞが吹き荒ぶ冬の国、銀世界の中にいてもなお輝く冷たい美貌と、凍てつく眼差し。彼女は巨大組織の女頭領にして、この一帯を掌握する絶対的な権力であった。

「金に目が眩んだか? ……ふむ、正直で結構なことだ。せめて苦しまぬよう……野郎共、やれ」
現れた賞金稼ぎを前に、ﾁｭﾘｰﾗは美しくも恐ろしい笑みを浮かべた。忠実な部下達が威勢よく返事をする。踵を返す凍れる女帝、背中で聞くのは吹雪に掠れる断末魔。磐石なる彼女の支配を崩せる者はどこにもいない。

「この世界は弱肉強食。悔いるなら、己の弱さを悔いろ。……あの世でな」
ﾏﾌｨｱだけでなく、この一帯がﾁｭﾘｰﾗのものだった。厳しくも美しく、そして悪党でありながら秩序と芯を持つﾁｭﾘｰﾗに、誰もが恋焦がれ、慕っていた。そして彼女は慕う者を強固に纏め上げ、その力を増してゆくのだ。

「埋めておけ。この雪だ、見つかるまい。……このような小物は、永遠に凍っているのがお似合いだ」
聞こえなくなった断末魔。賞金稼ぎに同情する者などどこにもいない。ﾁｭﾘｰﾗの配下の者の気持ちは一つだった。「我等の女帝を傷付けんとした不届き者め」。彼らの組織力は永久凍土の土より固い。