ノア【1】
「あんたたち、サボってんじゃない! 雨が降ってきちまうよ!」 ノアは自分もハンマーを振りつつ息子たちに激を飛ばした。今、ノアとその一家は一隻の舟を建造している。とてつもなく巨大な箱舟だ。 |
ノア【2】
「ビビってんじゃない! これはただのにわか雨さ! ーーまだ、ね」 降り始めた雨に、ノアの子供たちは動揺し、大騒ぎを始めた。数カ月前にノアが受けた神託は、この地がいずれ大雨に見舞われ、すべてが沈むだろうというものだったのだ。その時が来るまでに、洪水から逃れるための箱舟を完成させねばならない。 |
ノア【3】
「さてと、乗組員の方も集めないとね」 ノアは子供たちを落ち着かせ、箱舟の建造を任せると自分は野山に出かけた。箱舟に乗せるのはノアとその家族だけでは足りないのだ。 |
ノア【4】
「餌はやるから、そいつらを食べるんじゃないよ! あんたたちの子孫が食べるものがなくなるからね」 この地に住むあらゆる獣をつがいで集める。それが、洪水の後に再び豊かな大地をよみがえらせるための条件だった。肉食獣も草食獣も、子を産むように育てねばならない。ノアの大事業は始まったばかりだ。 |