ルーカン【1】
「私が働くと、みなさんのためになりません。ですから、働かないことにいたしました」 ある日、ルーカンはそんな決意を口にした。ルーカンはこれまで、屋敷の仕事をすべてだれよりも完璧にこなし続けた。その結果、他の使用人たちがまったく仕事を覚えてくれないことに気づいたのだという。 |
ルーカン【2】
「ご安心くださいませ。すべきことはリストにして、それぞれにメモをお渡しします」 ルーカンは使用人がこなすべき仕事をすべて文章にして、各使用人に手渡すとそれきり動かなくなった。王のそばに立ったまま、身じろぎひとつもしない。 |
ルーカン【3】
「働くつもりはありません、私を解雇するとおっしゃるのなら、どうぞ御意のままに」 王が心配してルーカンに話しかけるとそんな答えが返ってきた。疲れたのか、休みが欲しいのか、などと気を配ってみせても、彼女から返ってくるのは同じ言葉ばかりだ。 |
ルーカン
「かなりマシになりましたね。ですが、まだ私に頼る気持ちが残っている」 その心が完全に消えるまで動かないとルーカンは断言した。使用人たちが彼女と同等に働けるようになるには、一体何年かかることだろう。真面目さゆえに、真面目に働かない。そんな彼女の姿勢を見て、王は人知れずため息をつくのだった。 |