レイア【1】
「なんだって、私は女王なんかに生まれてしまったのかしら」 ストレスがたまると、レイアは決まってそのような言葉を口に出した。庶民は無邪気に憧れ、貴族や王族は血みどろになってでも座りたがるこの玉座。だが、その座り心地が芳しくないことをレイアは知っている。 |
レイア【2】
「あちらを立てればこちらが立たず、なのよ」 これもよく使う言葉だ。片方の町を整備すれば、もう片方の町が不公平だと文句を言う。両方を同時に整備すると、人手も予算も足りないと役人が文句を言う。ならばと税金を高くすれば、全員が一斉に文句を言う。どの文句を我慢して聞くか選ぶのが女王の仕事なのだ。 |
レイア【3】
「みんな仲良く、じゃだめなの!?」 外交も同じだ。平和が一番とわかっているはずなのに、周りの国と仲良くしようとすると、あの国には百年前にあれをされた、二百年前にこれをされたと恨み言を聞かされる。顔も見たことがない先祖がやったことでも、苦労をするのはなぜかレイアなのだ。 |
レイア【4】
「無事に今日を過ごせたのだから、大成功よね」 夜空の月を見上げるたびに、レイアは自分を褒めることにしている。無数の民を抱えるこの国を、今日一日、守り通せたことは素晴らしいことなのだ。月明りに照らされる町に、人の手で明かりが灯されていく様子を見ながら、レイアは今日という日に満足するのだった。 |