【円卓騎士】ランスロット【1】
「坊や、私の名を知ってくれているのかい? 光栄だね」 田舎の牧畜地帯を、騎士が愛馬に乗って歩いていると、並走する馬車から地元の子供が握手を求めてきた。少し気恥ずかしさを覚えつつも、騎士は求めに応じる。騎士……ランスロットの武勇は、いつの間にかこんな田舎にまで響いていた。 |
【円卓騎士】ランスロット【2】
「エルフの血は混ざっていないさ、キミたちと同じ人間だ」 田舎の人々の間のうわさ話を笑い飛ばしたものの、ランスロットの顔立ちはそう疑われても仕方ないほどに整っていた。鎧姿も、田舎の服装とは段違いに凛々しい。都にはこんなに格好よく、美しい人がいるのかという声が馬車の内から聞こえた。 |
【円卓騎士】ランスロット【3】
「何奴! 馬車を奪うとは不届きな!」 並走していた馬車が、突如として悪党に乗っ取られた。ランスロットの愛馬も、ボウガンで額を撃ち抜かれ、殺されてしまった。奪われた馬車からは人質にされた子供の悲鳴が聞こえる。追いかけようとしたが、重い鎧を着たランスロットの脚では馬車に追いつけるはずもない。 |
【円卓騎士】ランスロット【4】
「なりふり構うものか! 騎士が守るべきは姿ではない!」 なんとランスロットは、牧場にいた馬に飛び乗り馬車を追いはじめた。手綱も鞍もない。体面を重んじる騎士としてはあるまじき不格好な姿だ。だが、体面を捨て弱き者を救おうとするその姿こそが、ランスロットの騎士としての誇りなのだ。 |