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【月光】ヴェニティアナ【１】

「天使様、天使様、どうかわたくしの願いをお聞き下さいｰｰ」
天使達の寵愛を受ける聖女、それが神官ヴｪﾆﾃｨｱﾅ。彼女がひとたび天に祈りを捧げれば、すぐさま傍らに天使が現れた。彼ら天使の目的は一つ、愛する聖女の祈りを叶える為に。ただただ、聖女の麗しい微笑みを見る為に。

「天使様、どうぞわたくしを、世界の幸福の為にお使い下さい」
ヴｪﾆﾃｨｱﾅは天使に祝福されて生まれてきた。あなたは選ばれた聖女。人間と天使の境界線。大天使にそう告げられた聖女は答えた。では、どうすればいいのですか。天使は答える。我々の為に、祈ればよろしいのです。

「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。我々の願いはきっと天に届きます。天使様は、常に我々のお傍に」
ヴｪﾆﾃｨｱﾅは人々から天使のように崇拝されている。彼女は天使に代わって彼らを導く。そして聖女が、皆が祈れば、その願いは天使に届く。聖なる光が、礼拝堂に満ちていた。

「ｰｰそれで誰かが幸せになるのなら、喜んでこの身を捧げましょう」
天使は見返りのない無償の愛をヴｪﾆﾃｨｱﾅに注ぎ続ける。それはなぜか。ヴｪﾆﾃｨｱﾅが選ばれたからだ。それはなぜか。分からない。大いなるなにかの思し召しだろうか。わからない。けれど聖女は祈り続ける。誰かの、幸福の為に。