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トファルドフスキ【１】

「『心の中の天使と悪魔』っていう表現がありますけど、私の心には悪魔しかいないので。迷いはありません」
殺伐とした戦場にはそぐわぬ可憐な少女が、そう呟いた。彼女の名前はﾄﾌｧﾙﾄﾞﾌｽｷ。外見の印象からは想像もつかないほど強力な魔術を操る彼女は、狡猾な悪魔をも使役する、名の知れた魔術師である。

「さ、私の言うことをちゃんと聞いてね。ｰｰお行きなさい!」
彼女が使役する悪魔は、彼女の助言役にして魔力の供給源であり、同時に武器でもある。ﾄﾌｧﾙﾄﾞﾌｽｷが指示を下せば、光球状であったそれはたちまち巨大な龍へと変貌し、敵陣へと躍りかかった。

「貴方の言葉は『参考』にはするけれど、心まで乱されはしないわ」
状況は圧倒的優勢だというのに、ﾄﾌｧﾙﾄﾞﾌｽｷの顔色は優れない。彼女は緊張を保ったままだった。彼女の脳内には、常に悪魔が働きかけている。悪魔は彼女を陥れようと狙っている。ゆえに少女は、一瞬たりとも気を緩めることができない。

「……やはり悪魔は悪魔、なのね……御することができると思ったのが間違いだった」
一瞬でも気を緩めてはいけない。そう思っていたのに……。勝ち鬨が上がった刹那、ﾄﾌｧﾙﾄﾞﾌｽｷは安堵してしまったのだｰｰその心の間隙に、悪魔は滑り込む。敵陣を食い破った龍の牙が、今度は眼前に迫っていた。