ドラゴンベイン【1】
「また、腹が減ったのか」 剣士は、自らが携えた剣にそう話しかけた。傍目には不可解な行動だが、決してこれは酔狂ではない。彼女とその剣は本当に心が通じ合っているのだ。魂を持つ魔剣と、それを振るう剣士は静かに旅立った。 |
ドラゴンベイン【2】
「心臓の味を覚えさせてしまったのが間違いだった」 彼女は、魔剣の餌を求めて荒野を行く。舌の肥えた剣は、活きの良い心臓を食わさねば満足してくれない。出来る限り強きものが持つ心臓を食わせてやりたかった。 |
ドラゴンベイン【3】
「また舌を肥えさせてしまったな……」 魔剣は闘士の胸に突き刺さり、満足げに脈打っている。心臓から、直接活き血を吸っているのだろう。この闘士は町一番の使い手だったと聞く。極上の血を吸うその姿を見た女戦士は、私も良い酒を飲みたいな、と、人知れず呟いた。 |
ドラゴンベイン【4】
「やる気を出せ。……ゲンキンな奴だ」 グールの群れに囲まれ、女剣士は溜息をつく。彼らの心臓はとうに干からびている事を、魔剣も理解しているのだろう。倒しても餌が貰えないとなると、とたんナマクラになる。重さを増した剣を手にする彼女は、しかし不敵に笑いグール達に立ち向かっていった。 |