三日月宗近【1】
「まだ、上様のお命を狙う不届きものがいるのか」 三日月宗近は、美しい目元に鋭い光をきらめかせた。将軍の命を狙う暗殺者たちは、あとを絶たない。そのほとんどは取るに足らぬ小物だが、今回情報網に引っかかったのは大がかりな組織による計画だった。 |
三日月宗近【2】
「上様のお耳にこのことは入れるな、お心を煩わせてはならぬ」 護衛隊長である自分が守るべきは、将軍の肉体だけでなく心も含むのだと三日月宗近は自負していた。将軍の心が乱れれば、太平の世も乱れる。それを防ぐために自分たち護衛隊はいるのだ。 |
三日月宗近【3】
「まさか城内におったとはな。まさに獅子身中の虫!」 三日月宗近は将軍の近くに、くせものが紛れ込んでいる事を突き止めた。追い詰められた敵は実力行使に出ようとしている。三日月宗近、今、太刀を抜き放つ時! |
三日月宗近【4】
「天下泰平、世はこともなし……でございます」 三日月宗近は将軍に定例報告をした。だが、着物に返り血が残っていたことで、昼間あった荒事を将軍に悟られてしまったようだ。そのことについて将軍は深く追及をしなかった。世間に将軍の懐刀と呼ばれる女は、将軍自身にも厚く信頼を受けていた。 |