生太刀【1】
「さて、稽古の時間だな」 巫女には神に舞いをささげる役目があった。聖なる刀を神に奉納する時に舞う重要な舞いだ。間違いがあっては、天よりいただいている恩恵に背くことになってしまう。 |
生太刀【2】
「たまには稽古を休みたい時だってあるさ、私だってね」 巫女は舞いの稽古を欠かさない。たとえ雨の日、風の日、体調のすぐれない日であっても。毎日、同じ時間、同じ動作を繰り返す。 |
生太刀【3】
「だが、一日稽古を休めば、取り戻すのに三日かかるというからな。三日続けて倍の時間、稽古するのはゴメンなんだ」 巫女はそう、イタズラっぽく笑った。その顔は、どこにでもいる、あどけない少女そのものだった。 |
生太刀【4】
「神よ。天の火で、地の岩を鍛えし刀を、ここにささげます」 舞い本番の日。舞台の上で舞い始めた巫女は、神の使いそのものだった。あの日、あどけなく笑っていた少女と同じ人間とは思えない。継続した鍛錬は人に神の力をも宿らせるのだ。 |