クロト【1】
「……貴方の生が、実り多きものでありますように」 新たな魂を現世に送り出したクロトは、祈るようにつぶやいた。生きとし生けるもの全ては、クロトの胸元から生まれるのである。 |
クロト【2】
カラカラカラ、カラカラカラ、カラカラカラ クロトの傍らで、糸巻き車が廻り続ける。紡がれる糸は生き物の運命、その長さは寿命の永さだ。その運命からは、神も逃れられない。 |
クロト【3】
「……せっかく授かった命、大切にしなさい」 多くの人間が、命の神秘を知るクロトへの面会を望む。しかし、人の身にて彼女の元たどり着くことは難しいだろう。 |
クロト【4】
「……手荒なまねは、感心しないわね」 クロトがつぶやくと、周囲の岩や水がうねり、人の姿を取った。生命の紡ぎてである彼女は、無機物に命を与えることも可能なのだ。 |