セシリー【1】
「騎士団のみなさーん!今日も頑張って戦ってますかー?」 熱狂に包まれる王城の中庭で、一人の女性が呼びかける。普段は戦場の緊張感の中で精神を疲弊しきった兵士たちが、興奮の渦の中でそれに応えた。『最も可憐な王族』と呼ばれたセシリー姫に誰もが心奪われているのだ。 |
セシリー【2】
「皆さんが頑張ってくれるから、この国は守られています!本当にありがとう!」 彼女を守るためならば、この命など惜しくない。そう考える騎士も多いだろう。だが、しかし、彼女が抱える秘密を知る兵士は、ただの一人もいない。 |
セシリー【3】
「こうやって騎士のみなさんを鼓舞することに後ろめたさを感じるようになってきました……だって私は……」 父王の命令により、再び騎士たちの前に立つセシリー。いつものように輝く笑顔で騎士たちに元気を届ける。 だが、彼女の視線はただ虚空を見つめていた。 |
セシリー【4】
私は隣国の騎士と結婚する……それでも、騎士を鼓舞する役目は終わらないのね」 政略結婚の駒と士気向上のための偶像。セシリーは自分が背負う二つの役割にため息を漏らす。 虚偽と欺瞞に溢れた王国で、誰も幸せにならない舞台の演目は熱狂の中で今日も続けられる。すべてが瓦解するその日まで。 |