クレオン【1】
「国民にモラルを強いる議員は、果たしてモラルを守っているのかね?」 議会にクレオンの声が轟いた。 国民に国家への完全なる忠誠を誓わせる新法案を提出した古参議員に、怒声を浴びせたのだ。 議会内は騒然とした。 |
クレオン【2】
「国民に問題はない、問題を抱えているのは為政者の心だ」 他の政治家たちと論ずる時、彼女は必ずこの手の台詞を使う。 ゆえに問題の根源を国民の怠惰や無能に押し付けたい政治家たちから、クレオンは憎まれていた。 |
クレオン【3】
「これは受け取れん。金で買えるほど私の心は安くない!」 煙たいクレオンを懐柔しようとする政治家たち。だが、彼女はいかな買収にも応じようとしなかった。 それは決して腐敗すまいという、政治家の矜持だった。 |
クレオン【4】
「政治家なら、なぜ貧しいもののたちのためにこの金を使えないのだ!」 クレオンは、己を買収しようとした政治家たちを厳しく糾弾した。 政界の中でクレオンは敵を作り続ける。 だが、クレオン自身も気付かぬうちに、それに百倍する数の国民が味方となってくれていた。 |