シレーヌ【1】
「許されざる恋の歌をうたいましょう……」 美しきシレーヌ。その名は王国中に知られ、美しい姿と歌声を目当てに、多くの貴族や王族から求婚された。しかし、彼女には恋が何なのか分からなかった。いくら悩んでも答えはでない。考え事をしながら歩いているうちに彼女は、森の花園にやってきた。それが悲恋の物語の始まり。 |
シレーヌ【2】
「私は小さなころから政治の道具だった。父に言われるがままに、第一王子に嫁ぐのが定め……でも彼と出会ってしまった」 誰の心をも溶かす美しきシレーヌ。しかし、彼女自身の心は氷のように凍てついていた。森の花園で偶然出会った、隣国の王子と親密になるまでは。 |
シレーヌ【3】
「私は彼と出会ってしまった。彼を知ってしまった。彼を愛してしまった。もう私は、他人のための恋の歌はうたえない」 運命の神は時に残酷だ。彼女が愛した王子が、政略のために隣国へ養子に出された彼女自身の兄であることを、誰も知らない。 |
シレーヌ【4】
「私は蝶になりたい。たとえ短い命でも構わない。美しく、自由に、宙を舞いたい」 美しきシレーヌの哀愁を帯びた歌声は、ますます多くの人々の心を掴んだ。自らの恋を歌う彼女の旋律は、繊細で情熱的だった。すべての真実を知ったとき、彼女の歌はそこにどのような響きを加えるのか。 |