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【破壊神】ジャガーノート【１】

「頼む相手を間違えていないか? あたしは構わないけど、後でどうなっても知らないよ」
対立する敵国に自身の権威を示したいのだと、小国の王は食い下がる。救いを求めてすがりついてきた男へ、ｼﾞｬｶﾞｰﾉｰﾄはふたたび念を押すように問いかけた。

「やりすぎだぁ? あたしに加減なんか求めないでくれよ。分かっててあたしに頼んだんじゃないのか?」
滅びゆく敵国を目にしたかの王は、こんなつもりではなかったとｼﾞｬｶﾞｰﾉｰﾄに訴えた。しかし彼女は破壊の神だ。たとえ強く望んだわけではなくとも、彼女が触れるものはみな平等に灰と化してしまう。

「そうおびえるなよ。あたしだって、国を壊したくてやったわけじゃない」
次はこちらの国を滅ぼすのか、と問う王に向かい、ｼﾞｬｶﾞｰﾉｰﾄは困ったような笑みを浮かべた。彼女の力は滅ぼすことにしか使えない。しかし、彼女自身がすべての滅びを求めているわけではないのだ。

「そうだねぇ。創造神がうらやましいってのは、正直あるかもな」
加減ができないのは不便だろうと問われると、ｼﾞｬｶﾞｰﾉｰﾄはぼやいた。破壊衝動があるわけではないが、自身にできることは壊すことだけ。その事実にはやはり葛藤がある。生みだすことへのあこがれは、彼女の中にも確かに存在しているのだ。