【神罰執行者】ネメシス【1】
「お前に主の意志を伝える」 眼前に現れたネメシスを見ても、富豪は彼女が何者であるのか理解できなかった。やがて、彼女こそが己の待ち望んだ女神たる存在である事に気付き、自分にさらなる富を与えてくれるのだと喜び湧き立った。 |
【神罰執行者】ネメシス【2】
「何を勘違いしている……」 ネメシスの声は常に不機嫌だった。富豪は何か戒めでも与えられるのかと怪訝に思った。確かに自分の富は、貧しいものたちを騙して得たものであるが、富を有する者であれば誰であろうとしたことのある程度の行ないだと考えていた。果たして、それが咎めを受けるほどのものだろうか? と。 |
【神罰執行者】ネメシス【3】
「貴様の罰を執行する」 罰を受けるべきは騙された愚かものたちのほうであろう。富豪は必死にそう主張したが、女神の冷たい表情は永久氷壁の如く微動だにしない。それどころか、いつしか女神の手には剣が握られていた。 |
【神罰執行者】ネメシス【4】
「貴様は神に見放されたのだ」 富豪はネメシスに懇願し、目に涙を浮かべて反省の弁を語った。だが、女神の剣は容赦なく振るわれた。その刃が己の首と胴体を切り離してゆく刹那、富豪は自分が懇願すべき相手は、自分が騙してきた貧しい人々だったのだということを悟った。今更何を云うと女神が嗤った気がした。 |