【花嫁】サティ【1】
「お父さま、どうかお願いです……」 サティが何度頼んでも、父親は頑として首を縦に振らなかった。サティと恋人の結婚はいよいよ現実となりつつある。式の前に家に呼びたいと何度も訴えているのだが、父親は絶対に会ってなどやるものか、と拒絶の意思を見せ続けているのだ。 |
【花嫁】サティ【2】
「そんな……せめて、一度会って直接お話を……」 会う必要などない。どんな男であろうと許しはしない。父親はそう言い放つと、席を立ってしまった。サティは何度目かも分からないため息をもらした。一体、父は何が不満なのだろう? 彼は将来有望な若者で、サティとも愛し合っているというのに。 |
【花嫁】サティ【3】
「お父さま、彼は勇敢な人よ。お父さまが心配するようなことは何もないわ」 あんな臆病者がお前を守れるとは思えぬ、と言った父を、サティはそう諭した。しかし父親はあくまで首を横に振る。晩酌をし、肩をもんでやりながらサティが父に再び理由を問えば、父は静かな声で語り始めた。 |
【花嫁】サティ【4】
「お父さま、わかったわ。彼ともう一度話をしてみる」 本気ならば親の機嫌などうかがうな。強引に押しかけてでもさっさと娘を奪ってみせろ、それさえできずに何が本気だ。そんな父の本心をやっと聞き出せたサティは幸せそうに笑った。ウェディングドレス姿を父に見せる日は、そう遠くはないだろう。 |