【霊獣】麒麟【1】
「真円を描くこの足跡は……。おお、我ら獣の王は近くにおわす」 麒麟は聖なる獣と呼ばれ、世に姿を現せば名君が生まれるとも言われている。その麒麟を探すため、多くのものが、この地に足を踏み入れていた。時に、人でないものさえも。 |
【霊獣】麒麟【2】
「美しき音階を思わせるこの音。間違いない、我らが王の鳴き声だ」 人間の中には麒麟をワナにかけてとらえようとするものもいた。だが、ワナには決してかからないのが麒麟。とらえることはかなわなくても、ひと目見るだけで何かが変わる。それに期待して、人も獣も麒麟を探しているのだ。 |
【霊獣】麒麟【3】
「この神々しき姿、まさに聖なるもの」 湖のほとりで麒麟を見つけた。千年ぶりの奇跡をなしたのは一頭の白馬だった。彼は、純白の美しい体毛に自信を持っていた。しかし、いざ麒麟と並んで湖に映ると、自分の姿がひどくみすぼらしく見える気がした。 |
【霊獣】麒麟【4】
「私の背に翼が生えていく、これはいったい?」 神秘的な少女を視界に入れたとたん、己の身に起きた異変に白馬はおののいた。突然、己の背に神聖な白い翼が生えたのだ。動かすと、大空にはばたくことすらできた。これも麒麟の力なのだろうか。視線で問うと、麒麟は静かなまま、美しく笑った。 |