イナンナ【1】
「みなさん、お久しぶりです。精が出ますね」 久々に村に帰ってきたイナンナに、農民たちは笑顔を見せた。魔物たちとの戦いを終えたばかりの疲れ果てた肉体。だが、彼らに囲まれると元気が戻る。 |
イナンナ【2】
「今年の子たちも、みんなよい子たちですね」 イナンナは黄金の風になびく小麦たちを眺めながら、満足げにうなずいた。イナンナは豊穣の女神だ。この地に実る作物の一本一本を、まるで自分の子供のように愛している。 |
イナンナ【3】
「みなさん、お茶にしましょうか」 農民たちとお茶をのみ、お菓子を食べ始めると、先ほどまで戦場にいたことが嘘のように思える。この大地と畑とが本当の居場所なのだと、イナンナはあらためて確信した。 |
イナンナ【4】
「いつまでも、この剣が抜かれぬ日々を……」 イナンナの役目は大地の守護。時には大地を荒らす魔物を討つため、剣を握らねばならない。本音を言えばここにいる人々とともに過ごしたい。剣ではなくクワを握りたい。そんな日が来ることを想像しながら、イナンナは再び戦場へと向かうのだった。 |