【情人節】エロス【1】
「これ……。やだ、恥ずかしい」 ここは天界。人目につかない部屋で、女天使は何らか言いよどみ、顔を赤らめていた。彼女に呼び出された男天使も、彼女が何をしたいのか見当はついているだろう。今日はバレンタインデーなのだ。 |
【情人節】エロス【2】
「念のために聞いておきたいんですが、今、付き合っている人はいますか?」 男天使が首を横に振ると、女天使はほっと息をついた。そんな顔をされると、どうにもかわいく思えてしまう。男天使の胸はときめいた。 |
【情人節】エロス【3】
「これ、もらってください! ……きゃあ!」 恥ずかしそうに顔を伏せながらチョコレートを渡してくる女天使。だが渡されたチョコはどう見ても義理チョコ丸出し。おそらくはお徳用パックから一粒だけ取り出した代物だった。 |
【情人節】エロス
「バレンタイデーっていうのは渡すまでの演出が大切なんですよっ。それでは、解散っ!」 小芝居が済んだらもう興味はないとばかりに部屋を後にする女天使。その背中を男天使はぼうぜんと眺める。こんな風に仲間ひとりひとりの心をもてあそび楽しむのが、女天使・エロスなりのバレンタインの楽しみ方なのだ。 |