【情人節】ケルビム【1】
「お前、この訓練が終ったら広場に残れ! ひとりでな!」 天使騎士長・ケレビムに指名を受け、新入りの天使騎士は顔を青ざめさせた。これは地獄と言われる居残り特訓かーー同僚や先輩たちも、哀れむような目を新入りに向けてきた。 |
【情人節】ケルビム【2】
「力みすぎだ、足元がスキだらけだぞ!」 こうなれば訓練で良い所を見せて、地獄の特訓の手を少しでもゆるめてもらうしかない。そう思い、気合いを入れた新入りだが、肩に力が入るばかりで逆効果。ケレビムにはいつも以上に怒鳴られてしまった。今夜は帰れないのではーーそんな絶望が頭をよぎった。 |
【情人節】ケルビム【3】
「見ての通りだ、理由は察しろ」 夕刻、広場に残った新入りの前に、ケレビムは真新しい茶褐色のよろいを着て現れた。この気合の入りようはきっと、普段とは比べものにならないほどの厳しい訓練をするつもりなのだ。新入りは恐怖に震えた。 |
【情人節】ケルビム【4】
「いつもお前はがんばっているからな、少しぐらいは褒めてやってもいい」 よく見ると、厳格なはずの騎士長はバレンタインチョコを恥ずかしそうに握りしめていた。身につけた茶褐色のよろいも、あるいはチョコレートをイメージしているのだろうか。好ましく思いつつも、どう応えるべきかわからない騎士であった。 |