【秋節】テラ【1】
「あらぁ、お帰りなさい。お疲れでしょう、ゆっくりしておいきなさいな」 うっそうとした森を歩いていると、気が付けば辿り着いている場所がある。古い屋敷に、ささやかな庭。木漏れ日が照らすそこは女神の住処。心と魂が摩滅し疲弊した者が『呼ばれる』という、豊穣神テラのいる場所。 |
【秋節】テラ【2】
「さ、食べて食べて。庭で取れたとっておき。きっとお口に合うはずよ」 心も体も疲れ切った者に、テラはめいっぱいのおもてなしをする。運ばれてくる野菜や果物の数々は、どれもこれも瑞々しくてエネルギーに溢れていた。それもその筈、それは女神テラの力を注ぎ込まれて作られたものなのだから。 |
【秋節】テラ【3】
「力は、皆で仲良く分け合いっこしないとね。足りない子には、私がたくさん分けてあげる」 湧き上がる大地の力を、枯れ果てた者の魂へ。大地のエネルギーは、生き物がいなければ巡らない。だからこれは、ごくごく自然な営みの一つ。みなぎる大地のエネルギーは、やがて魂のすみずみにまで行き届く。 |
【秋節】テラ【4】
「いってらっしゃい。大地は、私は、いつもあなたの傍にいるわ」 そうして心と魂に力を取り戻した者は、もう大丈夫。振り返ったそこにテラの庭はない。けれど確かに、大地から彼女の『存在』を感じることができる筈だ。それはまるで、大地の抱擁の如く。 |