ニップール【1】
「享楽の罪を犯し続ければ、天より罰が下らん」 女神よりの警告を人々は信じようとしなかった。 己の持つ幸福が永遠に続くと信じてしまうのが人の子の性なのだ。 警告という名の助け舟に乗る者はおらず、人々は裁きの日を迎えようとしていた。 |
ニップール【2】
「汝らは、身より安寧を失う」 天より下されし最初の罰は疫病だった。人々の全身に黒斑が浮かび、高熱と脱力が全身を包んだ。 人々は許しと、この病を癒す方法をひたすら女神に乞うた。 |
ニップール【3】
「疫病は、飽食を捨てれば癒えよう」 干ばつがこの地を襲った。豊かに水を湛えていた河は、底を泥水が撫でるだけの溝となり、肥沃だった大地はひび割れ、作物は枯れ果てた。 女神の言葉に従い飽食を捨てると人々の体から黒班は消えたが、今度は乾いた喉で、天にひたすら雨を乞い始めた。 |
ニップール【4】
「今一度罪を許し、汝らの渇きを癒そう」 女神の慈愛により、雨が大地を潤す。人々は最初こそ女神に感謝をしたが、やがて再び享楽に走り始めた。 天の怒りは雨を降らせ続け、この地と人々を洪水の中に沈めた。 事の始まりより結末を見抜いていた女神は、哀しげな目でこの地を去る。 |