ヘカトンピュロス【1】
「平和がいいよ、平和が」 ヘカトンピュロスは牧場に住む女神だ。美しく荘厳な天界ではなく、彼女はあえて地上で生活をしている。女神には暮らしづらいことも多い地上だが、彼女はそんなことを意にも介していないようだ。 |
ヘカトンピュロス【2】
「天界も魔界も争いばっかりでヤな感じ。もっとのんびり暮らせばいいのに」 ヘカトンピュロスは女神だが、決して天界の味方だというわけではない。彼女はどこかの陣営に属し、争いに巻き込まれたくないがために、住み慣れた故郷を捨てたのだ。 |
ヘカトンピュロス【3】
「力よりも権力よりも地位よりも、ここでの生活には得難い魅力があると思うよ」 動物たちとの穏やかな暮らしに、天界のような華やかさはない。あるものと言えば、雲のようにゆっくりと流れる時間くらいだ。しかし、それだけあれば十分なのだと彼女は感じていた。 |
ヘカトンピュロス【4】
「ケンカがしたくなったら、草原に寝転がって空を眺めればいいよ」 ヘカトンピュロスは今日も空を見上げて、一日を過ごす。かつては天界でも有数の剛腕で知られ、あまりに多くの戦場を経験しすぎた戦女神も、今はもうその面影を残していない。戦いの虚しさを痛いほど知った彼女は、草原で寝転ぶ世捨て神となったのだ。 |