プロセルピナ【1】
「ここは冥府の底の底。死者すら恐れる奈落の中心。好き好んでくる場所ではないわ」 死者の女王たるプロセルピナは常に冥獄の最下層にいる。彼女が自らの意思でそこにいるのか、それとも囚われているのか。それは誰にも分からない。 |
プロセルピナ【2】
「こんな地獄の中の地獄に用事なんてないでしょうに。物好きもいたものね」 プロセルピナがいかにして死者の女王となったのか。その経緯はあまりにも長すぎる歴史の中で忘れ去られてしまった。彼女自身ですらも、その記憶を封印してしまっているのだ。 |
プロセルピナ【3】
「語るも恐ろしい、冥府の昔話。そんなものを聞きにきたの?」 かつてとある国の女王だった女性は、その美しさのために悪魔に見初められ冥府へと連れ去られた。それから彼女は死者の国の支配者として、気が遠くなるほどの時間を過ごした。自らをかどわかした悪魔すらも朽ち、死者の魂ですら風化して消滅したというのに、彼女は変わらずに地獄の底にいる。 |
プロセルピナ【4】
「私を助けたい?あなたは何もわかっていないのね」 死者を束ねる冥界の女王。悪魔を屠り、死者を喰らって生きながらえる万代不易の漂流者。誰も彼女を地上に引き上げることはできない。手を差し伸べれば、己が引きずり込まれるだけだ。 |