【神華】アリアンロッド【1】
「この森の外にはどんな世界が広がっているのかしら?」 外界を知らぬ無垢な女神は木々の葉の間から空を眺める。美しい植物と優しい動物に囲まれた生活には平穏があった。しかし、そんな穏やかな時間が女神の好奇心を満たすことはない。母からもらった髪飾りをひと撫ですると、彼女はこの森からの脱出を決意した。 |
【神華】アリアンロッド【2】
「この森が『迷わずの森』と呼ばれている理由がようやく分かったわ」 小さく嘆息し、女神は腕組みをする。一度入れば抜け出すことのできない神の森。ここに迷い込んだ者は、この森と共に生きる以外に術はない。迷うことすら諦めてしまう故に『迷わずの森』。ところが、女神の頭に妙案が浮かぶ。 |
【神華】アリアンロッド【3】
「お母様からもらったこの髪飾り……これはお母様からの伝言だったのね」 月のようになりなさい、と髪飾りを残して星になった女神の母。その意味を彼女はようやく理解した。 「だけど私の力だけじゃどうにもならないわ……」 そんな彼女に『彼ら』が囁いた。 |
【神華】アリアンロッド【4】
「ありがとう……みんな、私に力を貸して!」 小さなころから共に過ごしてきた神の森の花たちは、女神の願いに応えた。舞い上がる花弁とともに、彼女の体はふわりと舞い上がる。美しい月が空を駆けるように、彼女もまた自由な大空へと羽ばたいた。上空から見た『迷わずの森』は存外小さく、その外には見たこともない世界が広がっていた。彼女の本当の冒険がここから始まる。 |