エリヤ【1】
「神の光の御加護を受けて、天使の戦旗が風にはためく。得るは勝利か栄光か。競るは狂気の英豪か」(天使の詩第3篇) 戦場を支配する独特の高揚感は最高潮に達し、武器を握りしめた天使の新兵たちは彼女の一言を待ちわびていた。 「神と光の名のもとに、敵を正義の剣の錆とせよ」 その言葉の最後は、戦場に渦巻く咆哮にかき消された。 |
エリヤ【2】
「血咽ぶ地獄に風吹きこめば、天使の戦旗が大きく揺れる。斬れば返りし魔物の血。勝てば還りし真の地」(天使の詩第5篇) 戦の天秤は傾きつつあった。猛る魔獣たちは天使の守備陣形を蹂躙し、恐怖が戦士たちの心をじわじわと蝕む。潰走が始まるのは時間の問題だろう。 |
エリヤ【3】
「激しい戦も終わってみれば、天使の戦旗もただの布。命を賭しても報われず、祈りも届かぬ骸たち」(天使の詩第9篇) 戦場を黒く埋め尽くす魔獣たちは勝どきを上げ、勝敗は決した――ように見えた。 しかし、天使の戦旗は折れていない。旗手を務める彼女が大空に羽ばたくと、逃げ出した天使たちが彼女の放つ光に気付いた。 |
エリヤ【4】
「元始の戦地は荒れ野となりて、天使の戦旗も朽ち果てた。歴史を創りし戦なれど、語り伝うはこの歌のみ」(天使の詩第9篇) まばゆい光の中、戦士たちは再び戦場に戻った。一度は捨てた剣をまた握ったのだ。その姿は不格好ながらも、士気はこれまでないほどに高かった。 |